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再審査特許に対する中用権に関する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決

(Presidio Components, Inc. v. American Technical Ceramics Corp. (Federal Circuit, November 21, 2017))

2017年11月21日付で、連邦巡回控訴裁判所(以下CAFC)により、再審査中に補正された特許に対する中用権に関する判決が出されました。

判決の要点:

再審査された特許の権利者は、元のクレームと再審査クレームとが実質的に同一でない場合、元の特許の発行日と再審査された特許の発行日との間の期間については、侵害に対する損害賠償を求めることはできない(35 U.S.C.§§252、307(b))。この判決において、CAFCは、再審査特許の発行前における侵害行為に対して特許権者は損害賠償を受ける権利を有していない、と判示した。

判決の内容:

1.背景

Presidio Components, Inc.(以下Presidio)は、米国特許第6,816,356号(以下356特許)の特許権者である。356号特許のクレームには、多層コンデンサの電極をエッジ対エッジの関係に配置することによって、多層コンデンサの外部接点間に「フリンジ効果」容量を作り出す多層コンデンサが記載されている。Presidioは、カリフォルニア州南部地方裁判所において、356特許を侵害しているとしてAmerican Technical Ceramics Corp.(以下ATC)に対する訴訟を提起した。この侵害訴訟が地方裁判所において係属している間に、ATCは、新たな先行技術文献に基づく356特許の査定系再審査を請求した。この再審査手続きにおいて、Presidioは356特許のクレーム1を以下のように補正した。

1.A capacitor comprising:

a substantially monolithic dielectric body;

a conductive first plate disposed within the dielectric body;

a conductive second plate disposed within the dielectric body and forming a capacitor with the first plate;

a conductive first contact disposed externally on the dielectric body and electrically connected to the first plate; and

a conductive second contact disposed externally on the dielectric body and electrically connected to the second plate, and the second contact being located sufficiently close to the first contact in an edge to edge relationship in such proximity as to form a first fringe-effect capacitance with the first contact that is capable of being determined by measurement in terms of a standard unit.

Presidioは、当事者間の以前の訴訟(「Presidio I訴訟」)において地方裁判所が定めたクレーム解釈を明示的に反映させるために当該補正を行ったと、再審査において述べた。再審査証の発行及び実体的審理の後、陪審員は、ATCが356特許を侵害したと判断した。しかし地方裁判所は、再審査証の発行日前の損害を除外する絶対的中用権をATCが有すると認定し、損害賠償を制限する旨の申立てを認めた。

2.判決

控訴審においてPresidioは、「Presidio I訴訟」中に地方裁判所が採択したクレーム解釈を反映させることがクレーム補正の目的であったのだから、クレームの範囲は再審査時に変更されていないと主張した。CAFCはこれに同意せず、特許権者の補正の意図によりクレームの権利範囲が決定される訳ではない、と述べた。CAFCは、ここで行うべき検討作業は、通常のクレーム解釈に基づいて補正クレームの範囲が元のクレームの範囲と実質的に同一であるか否かを判断することである、と指摘した。

その後、CAFCは、元のクレームの範囲(「Presidio I訴訟」での地方裁判所による解釈)を再審査クレームの範囲と比較した。再審査中に追加したクレーム補正の文言“in terms of a standard unit”に関しては、元のクレームも、標準の測定単位で決定できるフリンジ効果キャパシタンスを要件とするものであると解釈されていた。従ってCAFCは、この点に関しては、元のクレームと補正されたクレームとは両方とも標準の測定単位で決定できるフリンジ効果キャパシタンスを要件とするため、互いに同一であると認定した。

但し、CAFCは、「Presidio I訴訟」の地方裁判所が純粋に理論的な計算により求められたフリンジ効果キャパシタンスを含むものとして元のクレームを解釈したことに着目し、補正クレームはこの点において異なる範囲を有すると認定した。CAFCは、フリンジ効果キャパシタンスを理論的に計算可能なコンデンサ構成を開示する先行技術文献に基づいて、再審査中に審査官が元のクレームを拒絶したことに着目した。Presidioは、その後の補正により「測定によって」という文言を追加し、この補正後のクレームの文言によれば、完全に理論的計算に基づいてフリンジ効果キャパシタンスを決定することは除外されると主張した。これらの事実に基づいて、元のクレームの解釈でのフリンジ効果キャパシタンスは、再審査クレームの対象ではない理論的計算によって決定することができるため、元のクレームと再審査クレームとでは範囲が実質的に異なるとCAFCは認定した。

 

以上により、CAFCは、絶対的な中用権による防御を認めた地裁の判断を支持した。

本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。
本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC米国特許弁護士 Herman Paris
米国特許弁護士 有馬 佑輔

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