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中国特許法第4回改正の改正案(全人大意見募集稿)のポイント

2019年1月4日に中国全国人民代表大会常務委員会(全人大)は、中国特許法の第4回改正の改正案(全人大意見募集稿)を公表しました。中国特許庁提供の情報によると、今回の第4回改正は2019年頃に採択、施行されると推測されます。

今回の第4回改正の改正案のポイントは以下の通りです(下線部が改正部分)。

1.特許権者利益の保護の強化

(1)懲罰的賠償制度の導入(改正案第72条第1項)
「…故意に特許権を侵害し、情状が深刻である場合は、上記方法で確定した金額の1倍以上5倍以下で賠償額を確定することができる。

(2)法定賠償額の引き上げ(改正案第72条第2項)
「権利者の損失、侵害者の得た利益及び特許実施許諾料の確定が何れも困難な場合には、人民法院は特許権の種類、権利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づき、10万元以上500万元以下の賠償を認定することができる。」

(3)帳簿提出命令(改正案第72条第4項)
人民法院は、賠償額を確定するために、権利者がすでに全力を尽くして挙証し、権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に権利侵害者に保有されている場合、権利侵害行為に関連する帳簿、資料の提供を権利侵害者に命じることができる。権利侵害者が提供せず、又は虚偽の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は、権利者の主張と提供した証拠を参考にして賠償額を判定することができる。

(4)行政ルートの完備化(改正案第70条)
国務院特許行政部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて、全国で重大な影響がある特許権侵害紛争を処理することができる。
 地方人民政府の特許事務管理部門は、特許権者又は利害関係者の請求に応じて特許権侵害紛争を処理するにあたって、本行政区域内における同一特許権の侵害事件を合併して処理することができる。区域を跨った同一特許権の侵害事件について、上級人民政府の特許事務管理部門に処理を請求することができる。

(5)特許侵害行為に対するネットワークサービス提供者の連帯責任の明確化(改正案第71条)

(6)信義誠実原則及び権利濫用禁止原則の明文化(改正案第20条)

(7)特許権侵害の訴訟時効を2年から3年に延長(改正案第75条)

2.特許の実施及び運用の促進

(1)職務発明についての所属機関側の処置権の明確化(改正案第6条第1項)
該所属機関は、職務発明創造の特許出願権及び特許権を法律に従って処置し、所有権による激励を実施し、株式、オプション、配当等の方式によって、発明者又は考案者に革新の収益を合理的に共有させ、関連発明創造の実施及び運用を促進することができる。

(2)特許の開放許諾制度の導入(改正案第50~52条)

3.特許制度の完備化

(1)意匠の国内優先権の導入(改正案第30条第2項)
「出願人は、発明または実用新案を中国で最初に出願した日から12ヶ月以内に、または意匠を中国で最初に出願した日から6ヶ月以内に、国務院特許行政部門に同一の主題について出願をする場合、優先権を享有することができる。」

(2)優先権書類の提出期限の緩和(改正案第31条)
「出願人は、優先権を主張する場合、出願時に書面の声明を提出し、かつ最初に発明、実用新案を出願した日から16ヶ月以内または意匠を出願した日から3ヶ月以内に、最初に提出した出願書類の謄本を提出しなければならない。書面の声明を提出しておらず、または期限が過ぎても特許出願書類の謄本を提出していない場合、優先権を要求していないものとみなす。」

(3)意匠の存続期間を10年から15年に延長(改正案第43条第1項)

(4)革新的医薬品の存続期間の補償(改正案第43条第2項)
革新的医薬品の市販審査、評価、承認にかかった時間を補償するために、中国国内と国外で同時に市販を申請した革新的医薬品の特許に対して、国務院は特許権の期間の延長を決定することができ、延長期間は5年を超えないものとし、革新的医薬品の市販後の特許権の総有効期間は14年を超えないものとする。

なお、改正案(全人大意見募集稿)の詳細(中国語)は、以下のサイトから入手可能です。
本欄の担当
副所長・弁理士 吉田 千秋
中国弁理士 張 小珣
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