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中国特許審査指南2019年改正について

 2019年9月23日に中国国家知識産権局(CNIPA)は、2019年11月1日に施行される改正特許審査指南を公表しました。

 今回の特許審査指南の改正ポイントは以下の通りです(下線部が改正部分)。

 

1.単一性違反が指摘された子出願に基づく分割出願の期限の明確化(第1部第1章第5.1.1節の(3))
 改正前の審査指南による規定が曖昧であったため、「分割出願について単一性不備が指摘された場合に該分割出願の査定が確定した後でも再分割出願を行うことができる」などの実務上の様々な解釈が存在した。これに対して、「審査官により発送された分割出願通知書又は審査意見通知書において分割出願に単一性の欠陥があると指摘されたため、出願人が審査官の審査意見に基づき再分割出願をする場合は、再分割出願の提出時期は当該単一性の欠陥がある分割出願に基づいて審査しなければならない。」に明確化された。即ち、再分割出願の提出時期は、例えば単一性不備の通知書の応答期限等とは関係なく、該分割出願の査定日から起算することが明確化された。

2.GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)意匠の記載要件の明確化(第1部第3章第4.4節)
(1)製品名称(第4.4.1節)
 製品名称には、GUIの用途及びGUIを用いる製品を明記しなければならない。また、一般に「グラフィカル・ユーザ・インターフェイス」等のGUIを示す用語を含めなければならない。
 例えば「ソフトウェア・グラフィカル・ユーザ・インターフェイス」や「操作グラフィカル・ユーザ・インターフェイス」などのように「グラフィカル・ユーザ・インターフェイス」のみを製品名称としてはならない。例えば、「温度制御グラフィカル・ユーザ・インターフェイスを有する冷蔵庫」等とする必要がある。
 動的GUIの場合は、製品名称に「動的」を記載しなければならない。
(2)図面又は写真(第4.4.2節)
 要部であるGUIを含むディスプレイパネルの少なくとも1つの正投影図を提出しなければならない。
 GUIの最終製品におけるサイズ、位置及び比例関係を明確に表示する必要がある場合は、GUIに関する面の1つの正投影最終製品図を提出する必要がある。
 動的GUIの場合は、少なくともGUIの1つの状態の正投影図を正面図として提出しなければならない。他の状態について、変化状態図として重要なフレームの図面のみを提供すればよい。
 投影装置を操作するためのGUIについて、GUIの図面に加え、投影装置の少なくとも1つの図面を提出しなければならない。
(3)簡単な説明(第4.4.3節)
 簡単な説明にGUIの用途を明確に記載しなければならない。
 GUIを含むディスプレイパネルの正投影図のみを提出する場合は、例えば「該ディスプレイパネルは携帯電話、又はコンピュータに用いられる」などの該GUIディスプレイパネルが適用される最終製品を列挙しなければならない。

3.ヒト胚性幹細胞に関する保護客体の拡大(第2部第1章第3.1.2節)
 「体内発育を受けていない受精してから14日以内のヒト胚で幹細胞を分離又は取得した場合」、公序良俗違反として拒絶することができない。

4.進歩性の判断手法の明確化(第2部第4章第3.2.1.1節)
 3ステップ法における第2ステップにおいて技術的課題を決定する際に、区別的特徴の一般的な作用や引用文献における作用に基づくことではなく、「区別的特徴により保護を求める発明において達成できる技術的効果に基づき、発明で実際に解決する技術的問題を決定しなければならない。」に強調された。
 また、3ステップ法における第3ステップにおいて容易想到性を判断する際に、「機能的に相互にサポートし、相互作用の関係がある技術的特徴について、上記技術的特徴及びそれらの間の関係により保護を求める発明において達成された技術的効果を全体的に考慮しなければならない。」のように、特徴間の関係も効果の考慮要素の1つとなった。

5.審査官による先行技術文献の調査手法の是正(第2部第7章)

6.審査官の公知常識の挙証責任の明確化(第2部第8章第4.10.2.2節の(4))
 「審査意見通知書において、審査官は請求項における技術的課題の解決に寄与した技術的特徴を公知常識として認定した場合、通常、証明するための証拠を提供しなければならない。」と明文化されたため、審査官による公知常識の引用の規範化が期待される。

7.面接審査や電話インタビューの緩和、明確化(第2部第8章第4.11.1節、第4.12節、第4.13節)
 「第1回審査意見通知書の発送後」などの面接審査の時期的条件が削除された(第4.12.1節)ため、重要案件や複雑な案件について第1回審査意見通知書の発送前に技術内容を説明するために面接審査を行うことが可能になった。
 出願人と審査官との意思疎通の方式として、面接審査及び電話インタビューに加え、「ビデオ会議、電子メールなどその他の方式」が追加された(第4.13節)。これによって、審査官との意思疎通の利便性の向上が期待される。

8.遅延審査制度の導入(第5部第7章第8.3節)
 特許出願及び意匠出願について、出願人は1年、2年又は3年の遅延期間を選択して遅延審査請求を行うことができる。

改正特許審査指南の詳細(中国語)は、以下のサイトにて入手することができます。
本欄の担当
副所長・弁理士 吉田 千秋
担当:中国弁理士 張 小珣
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