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外国制度の解説

特許協力条約 (PCT) に基づく国際出願の概要

1.国際出願とは、

[1] 一の言語により作成した出願書類を1つの受理官庁 (原則として、いずれかの国の特許庁)に提出することにより、各締約国(2005年8月現在:締約国数は約128カ国)へ直接出願したものと同等の効果が与えられる出願をいいます(PCT11条(3))。

[2] 国際出願に関する手続きは、所謂「国際段階」と「国内段階」とに分かれています。
国際段階においては、出願人は先行技術の調査結果及びその調査に基づく特許性に関する見解書(第43規則の2)を入手することができ、更に出願人が希望する場合には、国際予備審査請求をすることもできます。なお、最終的な特許付与の判断は各指定国に委ねられており、出願人が国際段階での調査結果等を考慮した上で指定国において特許の取得を希望する場合には、所定の期間内に希望する指定国に国内段階移行手続を行わなければなりません。

以下、国際出願制度についてより詳しく説明します。
なお、最後に国際出願から国内段階移行するまでの手続の概略を示したフローチャートを掲載しましたので参考にして下さい。

2.国際出願:

 まず、国際出願をするためには「所定の受理官庁」に「所定の出願書類」を提出しなければなりません(PCT10条・PCT3条)。

[1] 「所定の受理官庁」とは、原則として出願人がその居住者である締約国の国内官庁(PCT第19規則)をいい、例えば、わが国の特許庁が該当します。

[2] 「所定の出願書類」とは。願書・明細書・請求の範囲・必要な図面及び要約をいいます(PCT3条)。[2] 「所定の出願書類」とは。願書・明細書・請求の範囲・必要な図面及び要約をいいます(PCT3条)。これらの書類の記載の仕方等に関しましてはPCT規則に規定されております(PCT第4~11規則)。

[3] 受理官庁に提出された出願書類中に、例えば出願人適格違反や所定の言語等の基本的事項に関する欠陥があった場合には、国際出願日は認められません(PCT11条)。一方、欠陥が形式的な瑕疵の場合には、国際出願日は認定されますが、国際出願の補充の対象になります(PCT14条)。

[4] なお、日本国民が特許庁に国際出願をする場合には、所定の言語は日本語又は英語とされ、英語で出願をした場合には国際出願の国際調査機関を日本国特許庁又は欧州特許庁(EPO)のいずれかを選択をすることができます。

[5] また、PCTはパリ条約19 条の特別取極めの一つですので、パリ条約上の優先権を主張して出願をすることもできます。

[6] 従前は、国際出願をする際に、発明の保護を求める国(指定国)をそれぞれ指定しなければなりませんでしたが、出願人の手続きの簡素化の観点より2004年の1月1日以降の国際出願からその必要性がなくなりました。従いまして、現在の国際出願は自動的に全締約国を指定したものとして扱われます

[7] オンラインによる国際出願をすることも2004年4月から可能となりました。但し、英語による国際出願はオンライン出願の対象とはなりません。

国際出願日が認定されますと、関連のある先行技術の有無に関する調査が行われます。

3.国際調査:

[1] 各国際出願は国際調査の対象とされます(PCT15条)。
即ち、管轄国際調査機関が、国際出願の請求の範囲に記載された発明に関して、関連のある先行技術を発見することを目的とした調査を行います。

[2] 出願人は所定の期間内に上記調査の結果に基づき、管轄国際調査機関が作成した国際調査報告及び2004年1月1日以降の出願から導入されました「特許性に関する書面よる見解(以下、「見解書」といいます。)も併せて入手することができます。
その結果、従来は後述します国際予備審査の請求をしなければ、特許性有無の見解書を国際段階において入手できませんでしたが、PCT規則の改正により国際出願から比較的早期の段階で特許性の判断を入手できるようになり、出願人は国際出願を継続するか否か、或いは国際出願を断念するか否かの判断を早期に行うことが可能となり、出願人にとってより一層利用性の高い国際出願制度となりました。

[3] 上記国際調査報告や見解書を受領した後、調査報告に先行技術が記載され、或いは見解書に否定的なコメントが記載されていることへの対策として、出願人は所定の期間内に請求の範囲の補正をすることができます(PCT19条)。また、否定的な見解書に対して所謂「非公式なコメント」を提出することもできます。
これら補正書や非公式なコメントは、いずれも国際事務局に提出しなければなりません。

[4] 出願人は上記国際調査報告及び見解書を受領した後に、指定国において特許の付与を希望する場合には、国際出願の明細書・請求の範囲等の所定の翻訳文を指定国毎に提出する国内段階移行手続をしなければなりません(PCT22条)。

[5] 一方、国際調査の結果、より質の良い充実した明細書等の内容にて指定国へ移行することを望む場合には、出願人は所定の期間内に国際予備審査請求を行い、明細書・請求の範囲又は図面の記載内容の補正をすることができます(PCT34条)。

4.国際公開:

[1] 国際出願は、原則として国際出願日(または優先日)から1年6ヶ月経過後に、ジュネーブにある国際事務局により国際調査報告等と共に、その内容が公表されます(PCT21条)。

[2] 国際公開は、その利用を容易にするために国際事務局により、所定の形式で行われ、技術の集中及びその拡散を図ることを目的としています。

5.国際予備審査

[1] 国際予備審査は、請求の範囲に記載された発明が新規性等を有するか否かについて予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的としています(PCT33条)。

[2] 上述しました、国際調査機関による国際調査に基づく「見解書」の導入により、国際予備審査を請求する価値が減少されたともいわれております。しかし、国際調査の段階では補正は請求の範囲だけ、しかも一回のみ認められているに過ぎないのに対し、国際予備審査の請求をすれば明細書、請求の範囲及び図面の補正が数回可能であり、これらの補正を通じて全指定国において質の良い明細書等により、早期に権利を取得できる場合があります。

6.国内段階移行:

[1] 国際調査の箇所で説明しましたが、出願人は国際出願制度を利用して各指定国において特許の取得を希望する場合には、「所定の期間内」に保護を求める各指定国に対し「所定の移行手続」を採らなければなりません(PCT22条・39条)。

[2] 上記所定の期間内とは原則として優先日から30ヶ月とされており、この期間内に国際出願の明細書及び請求の範囲等の所定の翻訳文を指定国に提出しなかった場合には、国際出願はその指定国に関する限り取下げられたものとみなされます(PCT24条)。

[3] 各指定国移行後は、各指定国の特許法等に従って、各国別に個別に審査が行われ特許付与等の判断がなされます。

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