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特許適格性に関するCAFC判決(DDR Holdings, LLC v. Hotels.com, L.P. (Federal Circuit, December 5, 2014))について

 去る12月5日、米国巡回控訴裁判所(CAFC)により、特許適格性(米国特許法101条)の判断に関する判決が出されました。以下、この判決のポイントなどについて紹介します。

 DDR Holdings社は特許番号7,818,399(以下「399特許」)及び特許番号6,993,562(以下「572特許」)を有しており、これら2つの特許はいずれも第三者のウェブサイトのコンテンツとホストウェブサイトを組み合わせた合成ウェブサイトを作成するシステムと方法に関する。
 テキサス州地裁は、DDR Holdings社の主張を支持し、上記2つの特許が特許適格性を有するとし、特許権侵害を認める判決を行った。

 今回、CAFCで争われた、上記399特許のクレーム19を以下に示す:

(a) a computer store containing data, for each of a plurality of first web pages, defining a plurality of visually perceptible elements, which visually perceptible elements correspond to the plurality of first web pages;

(i) wherein each of the first web pages belongs to one of a plurality of web page owners;
(ii) wherein each of the first web pages displays at least one active link associated with a commerce object associated with a buying opportunity of a selected one of a plurality of merchants; and
(iii) wherein the selected merchant, the outsource provider, and the owner of the first web page displaying the associated link are each third parties with respect to one other;

(b) a computer server at the outsource provider, which computer server is coupled to the computer store and programmed to:

(i) receive from the web browser of a computer user a signal indicating activation of one of the links displayed by one of the first web pages;
(ii) automatically identify as the source page the one of the first web pages on which the link has been activated;
(iii) in response to identification of the source page, automatically retrieve the stored data corresponding to the source page; and
(iv) using the data retrieved, automatically generate and transmit to the web browser a second web page that displays: (A) information associated with the commerce object associated with the link that has been activated, and (B) the plurality of visually perceptible elements visually corresponding to the source page.

 CAFCにおいて、被告側は上記2つの特許は特許適格性を有さない抽象概念であり、米国特許法第101条に基づき無効である、との主張を行った。

 CAFCは、本判決以前に特許適格性が無いとして特許無効となったケースに関して、「広すぎて、一般的な記載である為、根底にある抽象概念の十分に特定的且つ意義のある応用とは見做すことはできず」、「これらのクレームには様々なコンピュータハードウェアが記載されているが、実質的に、クレームはインターネットやコンピュータを使用して抽象的なビジネス手法を実施しているだけに過ぎない」との見解を示した。
そして、CAFCは以下のような2つのステップによって特許適格性の判断を行った。

 ステップ1:Mayo Collaborative Servs. v. Prometheus Labs., Inc., 132 S. Ct. 1289 (2012) 及びAlice Corp. v. CLS Bank Int’l, 134 S. Ct. 2347 (2014)を踏襲し、対象となるコンピュータで実施されるクレームが、特許適格性を有さない抽象概念であるか否かを判断する。

 CAFCは、クレームで記載された抽象概念の正確な本質を定義することは困難である、との見解を示すと共に、クレームは数学的アルゴリズム或いは基礎的な経済活動或いは長期にわたって行われてきたビジネス手法を記載しておらず、クレームはビジネスの問題点に関して言及しているものの、それらの問題点はインターネットに特有のものである、との見解を示した。被告側は「抽象概念」を幾つかの異なる方法で特徴づけたが、CAFCは、それらのどの異なる特徴づけに基づいた場合も、ステップ2を満たすとして、クレームが上記ステップ1を満たすか否かを明確に示さなかった。

 ステップ2:クレームの各構成要素それ自体或いはそれらの組合せによって、クレームの本質が抽象概念の特許適格性を有する応用に変換されるか否かを判断する。

 CAFCは、ホストウェブサイトに表示された第三者のウェブサイトにおける広告が訪問者によってクリックされた後に、その訪問者は第三者のウェブサイトに移動することはないこと、ホストウェブサイトの”look and feel”の構成要素とクリックされた広告に関連する第三者のウェブサイトからの商品情報を融合させた、自動的に生成されたハイブリッド式ウェブページに訪問者を導くウェブサーバーを保持する外部提供者を特許クレームは必要としていること、訪問者を直ぐに第三者のウェブサイトに逃してしまうのではなく、ホストウェブサイトは外部提供者のサーバー上にあるウェブページに訪問者を送り、そのウェブページ上で、1)ホストウェブサイトの”look and feel”の構成要素を取り込み、2)実際に第三者のウェブサイトに入ることなく、第三者の商品を購入できる機会を提供する、ことに着目した。

 CAFCは、今回の訴訟の対象となったクレームはインターネットとコンピュータが関わっている意味で、過去に特許適格性が無いとされたクレームと類似しているが、インターネット上で実行される必要性と合わせて、インターネット普及以前から存在するビジネス手法の実行を単に記載しているのではない為、過去に特許適格性が無いとされたクレームとは異なる、との見解を示し、クレームされた解決方法は、主にコンピュータネットワーク社会で生じる問題を解消すべく、必要によりコンピューター技術を活用している、との見解を示した。

 更に、CAFCは”store within store”(店の中に店があるという概念)は発明時に既に公知であるが(第三者の提供するクルーズパッケージのキオスクが設けられた(物理的な)倉庫も存在した)、そのような公知の概念の実施にあたっては、従来存在しなかった問題であるような、インターネットの「位置」の一時的な性質の問題や、標準的なインターネット通信のプロトコルによって可能となる、瞬間的な異なる位置間の移動の問題を考慮する必要がなかった、ことに着目した。

 また、CAFCは、クレームは、2つのウェブサイトが同じように見えるようにすることによって売上を高める考えに関する、全ての応用を制限しようとしておらず、インターネットのウェブサイトによって直面する問題を解消する為に、複数のソースから構成要素を取り込む外部提供者の複合ウェブページを自動的に生成する特定の方法に関して記載している、との見解を示した。その結果、訴訟の対象となったクレームは、「追加された特徴(”additional features”)」を有し、「抽象概念を独占する試みで作成されたクレーム以上」であるとみなすことができる、と結論付けた。

 CAFCは2014年11月のUltramercial Inc. v. Hulu LLC 判決と今回のクレームを比較し、今回のクレームは、抽象的なビジネス手法を実行する為のインターネットの使用を、広く、一般的に記載しているのではなく、ハイパーリンクをクリックすることで始まってしまう従来からの一連の動作の代わりとなる望ましい結果を生む為に、インターネットとのやり取りをどのように工夫するかを特定しているとして、Ultramercial判決のクレームとは区別した。

本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
同 米国パテントエージェント 有馬 佑輔
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