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誘引侵害に関する米国最高裁判決 (Limelight Networks, Inc. v. Akamai Technologies, Inc.) 2014年6月2日

 2014年6月2日付けで米国最高裁判所(US Supreme Court)が、2012年8月31日のCAFC en banc判決を覆し、米国特許法第271条(a)或いはその他条項に基づく直接侵害が存在しない場合は、米国特許法第271条(b)に基づく実施者(Limelight社)による誘引侵害が成立しない、旨の判断を下す判決を示しました。その概要を以下に紹介致します。

 2006年にAkamai社が自社の所有する米国特許番号6,108,703(以下703特許)をLimelight社が侵害したとしてマサチューセッツ地裁に訴えを起こしていた。上記703特許はコンテンツデリバリネットワークを通じて電子データを伝送する方法に関する特許であり、コンテンツプロバイダーのウェブサイトの構成要素をAkamai社のサーバーに記憶させ、それらのサーバーにユーザーがアクセスする技術である。

 Limelight社はコンテンツデリバリネットワークを通じて上記703特許の幾つかのステップを実行していた。しかし、上記703特許は、ユーザーのウェブサイト上の構成要素を所謂“タギング(tagging)”するステップを必要とする一方で、Limelight社のサービスは、カスタマー自身が“タギング(tagging)”を行うことを必要としていた。

 上記地裁判決では、上記703特許は“タギング(tagging)”を行うステップを必要としており、Limelight社はカスタマーのタギングを指示及び管理(direct or control)していないことを鑑み、米国特許法271条(a)に基づく直接侵害は成り立たない、との判断を下していた。

 しかし連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、被告が方法特許の幾つかのステップを実行し、第三者に残りのステップを実行するよう促した場合、第三者が被告と代理人関係、或いは被告による指示、管理を受ける関係ではないが故に、被告による直接侵害が成立しないが、米国特許法第271条(b)の誘引侵害が成立する、とのAkamai社の訴えを支持した。

 CAFCは、上記判決の根拠として、米国特許法271条(a)やその他の条項に基づく直接侵害が成立しない場合においても直接侵害が存在し得る、との見解を示していた。

 今回の最高裁判決は、上記CAFCの判決は米国特許法第271条(b)の明確な基準を奪い、裁判所が2つの異なる侵害法(直接侵害及び誘引侵害)を適用することを必要とする、との意見を述べると共に、上記CAFC判決を覆し、米国特許法第271条(a)或いはその他条項に基づく直接侵害が存在しない場合は、米国特許法第271条(b)に基づく誘引侵害は成立しない、との見解を明らかにした。

本件記載の連邦官報は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長・弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC 米国パテントエージェント 有馬 佑輔
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