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「先後願の規定に違反して無効理由を含む特許権は、権利範囲が否定される」―韓国最高裁判決―

 2009年9月24日、 韓国の最高裁判所は、Pfizer Incorporation社対AhnGook Pharm社の間で争われた権利範囲確認審判事件の上告審において、「先後願の規定に違反して無効理由を含む特許権は、権利範囲が否定される(即ち、権利行使が制限される)」旨の判決(事件番号:2007フ2827)を下した。先の最高裁判決で、「特許発明が新規性を有しない場合や、明細書の記載に不備があり特許発明の技術的範囲を特定できない場合等」には、特許無効の審決が確定される前であっても特許発明の権利行使が制限されるとした考えを敷延するものとして注目される。 

1.事件の概要(経緯)
 本件は、特許権者(Pfizer Incorporation社)が、AhnGook Pharm社(以下、A社と略します)が実施している技術が特許権者の特許(韓国特許第91020号)のクレーム1(Besylate salt of amlodipine)の権利範囲に属することを確認する積極的権利範囲審判を特許審判院に請求し、その後、最高裁判所に上告された事件である。 

2.事件の争点
 本件の争点は、特許権者の特許発明のクレーム1が、特許権者の他の先願である特許(韓国特許第90479号)のクレーム1(Method of besylate salt of amlodipine)と同一であり、本件特許は先後願の規定に違反して無効理由を含むものであるとして、権利範囲が否定されるか否か(即ち、権利行使が制限されるか否か)、であった。 

3.判決内容
 本件において最高裁は、「特許発明が新規性を有しない場合には、登録無効の審判が請求されなくても当該特許発明の権利範囲を否定することができる(即ち、権利行使が制限される)。特許無効の理由のうち、特許発明の新規性の判断と先後願の判断は、何れも発明の同一性が問題になるという点で共通しており、前述した法理は、特許が先後願の規定に違反して無効理由を含む場合においても適用される」とし、A社が実施している技術が特許権者の特許(韓国特許第91020号)のクレーム1(Besylate salt of amlodipine)の権利範囲に属しない(即ち、権利行使が制限される)との判決を下した。 

4.今回の韓国最高裁判所の判決
 特許は、一旦登録された以上、無効審判により無効審決が確定されない限り、有効なものであり、登録無効の審判が請求されても、侵害訴訟において、当該特許は当然無効であると判断することができないのが原則である。
 韓国の最高裁判所は、この例外として、「特許発明が新規性を有しない場合や、明細書の記載に不備があり特許発明の技術的範囲を特定できない場合等には、特許無効の審決が確定される前であっても、特許発明の権利範囲を否定できる(即ち、権利行使が制限される)」旨の判決を過去に下している。
 今回の韓国の最高裁判所の判決は、特許が先後願の規定に違反して無効理由を含む場合においても特許発明の権利範囲が否定される(即ち、権利行使が制限される)ことを示した最初の判決であるという点に意義がある。 

本欄の担当
副所長弁理士 伊東忠重
韓国弁理士 閔 泰皓(TAE-HO MIN)
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