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特許権の共同侵害に関する事件で判決 2010年12月20日 米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)

 去る12月20日、米国の巡回控訴裁判所(CAFC)は、特許権の共同侵害をめぐって争われていた事件Akamai Tech v. Limelight Networks について、注目すべき判決を下しました。

<判決概要>
 CAFCは、従前の「他者の行動を管理或いは、命令したか否か」という共同侵害の判断基準(BMC Res., Inc. v. Paymentech, L.P., 498 F.3d 1373, (Fed. Cir. 2007))と、「顧客によるオンラインシステムへのアクセスに対する管理と、該オンラインシステムの使用方法の提供のみでは直接侵害の立証に不十分である」という共同侵害の判断基準(Muniauction, Inc. v. Thomson Corp. and I-Deal (Fed. Cir. 2008))とは、依然として、有効な判断基準であると支持しつつ、更に「代理人関係或いは、契約義務によるステップの実行」が必要であると明らかにしました。

<本判決の重要なポイント>
・「他者の行動を管理或いは、命令したか否か」の共同侵害の判断基準を明らかにしたBMC判決を更に拡大し、共同侵害を立証する為には、「管理或いは命令に加え、一方の者による行為が他方の者に起因している関係」が必要であると明らかにしました。また、CAFCは、上記の関係を「代理人関係或いは、契約義務」と解釈しました。

・上記代理人関係の条件として、第一当事者の代理として代理人が行動し、代理人は第一当事者の管理下にあることを、両者(第一当事者及び代理人)が共に同意していることが必要であると明らかにしました。

・更に、上記代理人には、請負業者、契約社員も含まれると解釈しました。

・本判決では、BMC Res., Inc.の判決に言及し、「侵害成立のために複数の者の行為を必要とする特許クレームの場合には、その侵害の立証が困難であるという問題があるが、単独の者の行為により侵害が成立するようにクレームを記載することで、そのような問題を回避できる(BMC Res., Inc.)」ことを再度述べています。なおこの言及されているBMC Res., Inc.の判決中では、クレーム中の異なる行為を異なる4者が実行するという形でBMCがクレームを記載したために、侵害の立証が困難となっているが、単独の者に着目したクレームを作成し、このクレームのプロセスの各要件をこの単独の者が提供又は受け取る形で各ステップを記載すれば問題がなかった旨が、指摘されています。

・また本判決では、単独の者の行為により侵害が成立するようにクレームを最初から記載するという対応だけでなく、特許権者は再発行出願(Reissue Application)により、侵害成立のために複数の者の行為を必要とする特許クレームを訂正することもできる、と述べられています。

本件判決文は以下のサイトから入手可能です。
本欄の担当
弁理士 吉田千秋
米国オフィスIPUSA パテントエージェント 有馬佑輔
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