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特許適格性に関する米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決 2011年8月16日 (Cybersource Corp. v. Retail Decisions, Inc. 事件)

 2011年8月16日、米国連邦巡回控訴裁判所(Court of Appeals for the Federal Circuit: CAFC)において、特許適格性を巡り争われていた事件Cybersource Corp. v. Retail Decisions, Inc. の判決が下されました。
 本件では、インターネットを介してクレジットカード決済をしたときの決済有効性を認証する方法とその方法を記録したコンピュータ可読媒体とについて、その特許適格性が主に争われていましたが、米国連邦巡回控訴裁判所(以下「CFAC」)は、「インターネットを介してクレジットカード決済をしたときの決済有効性を認証する方法とそのコンピュータ可読媒体は特許適格性を有さない」との地裁判決を支持しました。

本件の背景

 米国カリフォルニア州北部地区連邦地裁は、略式判決によって、インターネットを介してクレジットカード決済をしたときの決済有効性を認証する方法とそのコンピュータ可読媒体は特許適格性を有さない、との判決を出しました。
 同地裁は、上記方法クレーム及びコンピュータ可読媒体クレームに、機械-変換テスト(machine-or-transformation test)が適用されるとしました。そして、本件の方法クレームに関して、クレジットカード番号とインターネットアドレスのデータ収集と編成操作は、「変換」といえるほどの実質性を持たない、と判示しました。また更に、クレーム中にはインターネットはデータソースとして記載されているだけであり「機械」では無いとして、「クレームの方法は特定の機械に結びつけられている」というCybersourceの主張を退けました。
 また上記方法クレームを単にコンピュータ可読媒体クレームに書き換えただけのクレームも特許適格性を有さない、と判示しました。

CAFCでの判決

・方法クレームに関して

 上記地裁判決を支持すると共に、更に、上記方法クレームの全てのステップが人間の精神活動のみに基づいて実施可能であり、従って抽象的概念であるため、特許適格性を有さない、と判示しました。

・コンピュータ可読媒体クレームに関して

 Cybersource社は、上記コンピュータ可読媒体クレームは、人間の精神活動を記載しているのではなく、コンピュータ可読媒体、つまり米国特許法101条に記載の「生産物(manufacture)」を記載している、と主張しました。
 しかし、CAFCは、クレームの見かけ上の記載が特許法101条に規定された方法、装置、生産物、または組成物であるか否かに関わらず、特許適格性の判断に関しては、「根底にある発明 (underlying invention)」を考慮する、との見解を示しました。
 そして、CAFCは、上記方法クレームと同様、上記コンピュータ可読媒体クレームも、特許適格性に関する判断では、インターネットを介してクレジットカード決済をしたときの決済有効性を認証する方法、が「根底にある発明」であると見なされる、と判示しました。
 尚、CAFCは、Research Corp. Techs. V. Microsoft Corp., 627 F.3d 859 (Fed. Cir. 2010)に言及し、「実際には (as a practical matter)」人間が全体を実行することが出来ないような、コンピュータにより実施する方法は、特許適格性を有する、との見解を再度示すと共に、本クレームに記載の方法は、人間の精神活動に基づいて全体を実施可能であるとして、これに該当しない、と判示しました。

本件判決文は以下のサイトから入手可能です。
本欄の担当
副所長弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC パテントエージェント 有馬 佑輔
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