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韓国大法院の判例変更

韓国大法院の全員合議体(日本の最高裁判所の大法廷に相当)により、訂正審決と再審事由に関する従来の判例を覆す判決が出されました。

 

1.従来の大法院判例

 特許無効審判に関する審決取消訴訟の弁論終結の後に、該特許に対する訂正審判が認容確定した場合、これまでは、該訂正前のクレームに基づいた審決取消訴訟の判決は、民事訴訟法上の再審の事由のうち、「判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が他の裁判又は行政処分により変更されたこと」に該当することとなり、原裁判所へ破棄差戻されていました(99フ598判決等)。

 

2.事件の経緯

▪ Aが特許権者Bの登録特許に対し、進歩性欠如を理由に無効審判を請求。

▪ 特許審判院(日本の特許庁審判部に相当)から請求棄却の審決。

▪ Aが該請求棄却審決に対し、審決取消訴訟を提起。

▪ 特許法院(日本の知財高裁に相当)から審決取消の判決。

▪ Bが大法院(日本の最高裁判所に相当)に上告し、その後、クレームを減縮する訂正審判を特許審判院に請求。

▪ 特許審判院から訂正認容の審決が出て確定。

▪ Bが、該訂正審決確定を理由に、上記審決取消(特許無効)の判決は再審事由を抱えることから破棄すべきと主張。

 

3.今回判決の内容

 韓国大法院は、『訂正前のクレームに基づいた判決の後に、クレーム訂正認容の審決が確定したとはいえ、その判決が「判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が他の裁判又は行政処分により変更されたこと」の再審事由に該当するようになったとは認められない』とし、これまでの判例を変更いたしました(2016フ2522判決)。

 

 上記結論の理由として、韓国大法院は、

i)当該審決において原処分である特許査定を、審決取消訴訟における「判決の基礎となった行政処分」とは言えない、

ii)訂正審決が確定したからといって、該訂正前の明細書等の内容が「確定的に」変更されたとは限らない、

iii)事実審の弁論終結の後に確定した訂正審決をもって、特許権者が該事実審での判断に争うことを認めると、訴訟手続や紛争の解決が顕著に遅延することになり兼ねない、等を挙げました。

 

4.コメント

 今回の判決は、韓国最高位の裁判所からの判決であって、今後、下級の裁判所はそれに拘束され、各機関の法律等の解釈や運用においても適用されます。

 

 具体的に、これからは、例えば、特許権者が無効審判を請求され、クレームの訂正を求める場合は、無効審判のなかで訂正を請求するか、審決取消訴訟を提起して(もしくは、提起されて)なるべく早い段階で訂正審判を請求することにより、該審決取消訴訟の弁論終結の前に訂正審決を受けるようにする必要があります。

 即ち、権利者には、無効審判等を請求された際に、特許権等を守るための戦略を早い段階から、あらゆる面で充分に検討しておくことが重要になってくると存じます。

 

 なお、上記の韓国語での情報は、

https://www.scourt.go.kr/news/NewsViewAction2.work?pageIndex=1&searchWord=&searchOption=&seqnum=849&gubun=702

から入手することができます。

 

本欄の担当:副所長 弁理士 吉田 千秋

韓国弁理士 柳光煕(ユ・ガンヒ)

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