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装置クレームにおける機能的文言に関する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決

(MasterMine Software, Inc. v. Microsoft Corporation (Federal Circuit, October 30, 2017))

2017年10月30日付で、連邦巡回控訴裁判所(以下CAFC)により、装置クレームにおける機能的文言に関する判決が出されました。

判決の要点

この判決において、CAFCは、クレームされた装置の生産、使用、販売の申し出、又は販売がされた際に侵害が発生することが明らかな場合であれば、装置の機能を記述するために、装置クレームにおいて機能的文言を用いることが許される、と判示しました。

判決の内容

1.背景

MasterMineは、米国特許第7,945,850号(以下、850特許)および米国特許第8,429,518号(以下、518特許)を侵害しているとして、Microsoftに対する訴訟を提起した。この特許は、顧客関係管理(CRM)アプリケーションのデータを容易に解析・報告できるようにするための方法およびシステムに関する。CRMアプリケーションを用いることにより、企業の営業部門、営業活動、販売チャネル、および顧客を1つの環境に統合して、顧客対応を管理することができる。以下に示す850特許のシステムクレーム8が当該発明の代表的なクレームである。

  8. A system comprising:
a database adapted to store customer relationship management (CRM) records containing CRM data;
a programmable processor adapted to execute a CRM software application and a spreadsheet software application;
a reporting module installed within the CRM software application, wherein the CRM software application includes a plurality of report toolkits, each report toolkit defining one or more report templates;

wherein the reporting module installed within the CRM software application presents a set of user-selectable database fields as a function of the selected report template, receives from the user a selection of one or more of the user-selectable database fields, and generates a database query as a function of the user selected database fields,

wherein, in response, the spreadsheet software application generates the pivot table within the electronic worksheet to present the CRM data in accordance with the report parameters.

 

地裁は、上記2つの特許のシステムクレームは、2つの異なる発明カテゴリ(装置および方法)を不適切に記載しているため不明確である、との判決を下した。MasterMineは、この判決を不服としてCAFCに上訴した。

2.判決

CAFCは、特許の装置およびシステムクレームは2つの異なる発明カテゴリを不適切に記載しているのではなく、無効ではないとのMasterMineの主張に同意した。この結論を導くにあたり、CAFCはまず、装置と当該装置の使用方法との両方をカバーする単一のクレームは特許法112条の下で不明確である、との判決を下した先例に着目した。この先例の判決において、CAFCは、1つのクレームにおいて装置と当該装置の使用方法との両方を記載すると、侵害対象の装置を生産した時点で侵害が発生するのか、または侵害する態様でユーザーが実際に装置を使用した時点で侵害が発生するのかが不明確になってしまう、という点を問題とした。その一方で他の先例において、CAFCは、装置クレームが機能的文言を使用するからといって必ずしも不明確となる訳ではなく、ミーンズプラスファンクション形式を使用することなく機能的文言によりクレームを限定することが許される、と判断していた。
CAFCは、本事案である850特許および518特許のクレームを、CAFCが先例の判決で検討した他の特許のいくつかのクレームと比較した。第1の例として、CAFCは、以下に示す米国特許第5,251,236号(以下、236特許)のクレーム3について検討した。

3. A data transmitting device for transmitting signals corresponding to an incoming steam of bits, comprising:
first buffer means for partitioning …;
fractional encoding means for receiving …;
second buffer means for combining …;
trellis encoding means for trellis encoding …; and
transmitting the trellis encoded frames.

この第1の例の判決においてCAFCは、上記クレームの最初の4つの構成要件が装置的要件(バッファ手段、部分符号化手段、第2バッファ手段、トレリス符号化手段)である一方で、5番目の構成要件は方法的要件(トレリス符号化フレームを送信する)であるため、236特許のクレーム3は不明確であり無効である、と判断した。
第2の例として、CAFCは、米国特許第6,879,830号(以下、830特許)のクレーム1について検討した。

1. A mobile station for use with a network including a first base station and a second base station that achieves a handover from the first base station to the second base station by:
storing link data for a link in a first base station,
holding in reserve for the link resources of the first base station, and
when the link is to be handed over to the second base station:
initially maintaining a storage of the link data in the first base station,
initially causing the resources of the first base station to remain held in reserve, and
at a later timepoint determined by a fixed period of time predefined at a beginning of the handover, deleting the link data from the first base station and freeing up the resources of the first base station, the mobile station comprising:
an arrangement for reactivating the link with the first base station if the handover is unsuccessful.

この第2の例の判決においてCAFCは、上記クレーム1は移動局を規定し更に当該移動局に上記機能を実行させることを要求している訳ではなく、当該移動局が動作するネットワーク環境の前提として上記機能を列挙しているにすぎないとして、上記クレーム1は有効であると判断した。結論として、CAFCは、クレームされた装置(即ち特定のネットワーク環境において用いられることが必要な移動局)の生産、使用、販売の申し出、又は販売がされた際に侵害が発生することが明らかであるので、通常とは異なる記載形式であっても上記クレームが不明確になることはない、と判示した。
次にCAFCは、本事案の850特許と518特許において問題となってる装置およびシステムクレームについて検討した。CAFCは、これらの特許のクレームは“presents”、“receives”、“generates”などの能動的な動詞を含むが、これらの動詞は“reporting module”の実行可能な動作について記述するために許される機能的文言であると判断した。CAFCは、830特許(上記第2の例)のクレーム1(および検討した他の特許のクレーム)と同様に、本事案の850および518特許のクレームは、装置及びシステムが所望の機能を実行可能である構造を有していることを規定しているにすぎない、と判断した。CAFCはまた、本事案の850および518特許の機能的文言は構造(CRMソフトウェアアプリケーション内にインストールされたreporting module)に特定的に結びつけられている一方で、236特許(上記第1の例)のクレーム3の機能的文言が孤立して現れているという理由で、236特許のクレーム3は本事案とは異なると判断した。CAFCはまた、先例において無効と判断されたクレームではユーザによって実行される行為が明示的に規定されていた一方で、本事案の850および518特許のクレームではユーザーによる選択を受け付けて応答することのできるシステムが規定されていると判断し、本事案の850および518特許のクレームは、先例において無効であると判断した他のクレームとは異なると判断した。

CAFCは、850および518特許のクレームにより本発明の権利範囲を当業者は合理的な確実性をもって知ることができると判断し、不明確であると判断した地裁の判決を取り消した。

本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィス IPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
米国特許弁護士 有馬 佑輔

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