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自明性判断における先行技術の範囲に関する連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判決 (Donner Technology, LLC v. Pro Stage Gear, LLC (Fed. Cir. 2020 11月9日))

2020年11月9日付の判決で、連邦巡回控訴裁判所(以下CAFC)は、自明性判断において適切に考慮されるべき先行技術の範囲に引例が属するか否かを判断するための基準を示しました。以下に、その判決の内容につきましてご報告申し上げます。

<背景>

Pro Stage Gear, LLC(以下「Pro Stage」)は、米国特許第6,459,023号(以下「023号特許」)の特許権者である。023特許は、増幅されたギター音に効果を与えるペダル等のギター効果装置を取り付けるための支持板に関する。ペダルは、通常、支持板上に配置され、脚により操作するスイッチにより制御することにより、ユーザは手で自由に楽器を演奏することができる。023特許の発明が解決しようとする課題は、個々のギター効果装置の位置決め及び変更を容易にする一方で、ケーブルの引き回し及び配置のための限られた安全なスペースを提供することができるよう改良された支持板を提供することである。023特許によって教示されたペダル板の2つの図を以下に示す:

Donner Technology, LLC (「Donner」)は、023特許に対して当事者系レビュー(inter-partes review)を申請し、023特許が米国特許第3,504,311号(以下「Mullen」)より自明であると主張した。Mullenは電気リレーに関する発明であり、その発明が解決しようとする課題は、「1つ以上のリレー構造を支持すると共に、当該リレー構造に接続されて種々の制御回路に当該リレー構造を接続する配線を配置するための配線用スペースを提供することができるよう改良された支持材を提供すること」である。Mullenの支持体の一実施形態を以下に示す:

 

特許審判部(以下「審判部」)は、Mullenが先行技術の範囲内にあることをDonnerが立証していないとの理由で、Donnerによる023特許に対する申し立てを拒絶した。ドナーはこの決定に対してCAFCに控訴した。

 

<CAFC判決>

 CAFCは、以下の2つのテストにより、類似とみなせる先行技術の範囲が定義される、と指摘した。

(1)当該技術が、発明の解決しようとする課題に関わらず、同一の技術分野からのものであるか否か。

(2)当該引例が同一の技術分野に属しないものである場合、発明者が解決しようとする特定の課題に当該引例が合理的に関連するものであるか否か。

 023特許とMullenとは同一の技術分野のものでないことは明白であったため、CAFCは、023特許が解決しようとする特定の課題にMullenが合理的に関連しているかどうかに焦点を当てた。ここでCAFCは、クレームに係る発明が解決しようとする課題と引例が解決しようとする課題とは、当業者の観点から特定し比較すべきである、と指摘した。その際に重要なこととして、CAFCは、当業者の属する技術分野外にある引例の内容を参考にしようとする当業者の視点に立って、当該分析が行われなければならない、と指摘した。CAFCはまた、自らの技術分野以外の技術を検討せざるを得ないと考えた当業者は、そのような他分野の技術をすべて除外することになる程に狭い範囲で課題を特定することはしない、との見解を述べた。

 CAFCは、審判部が適切な基準を適用していないと判断し、Mullenが先行技術の範囲に属しないと結論付けた審判部による事実認定の正当性を認めなかった。例えば、CAFCは、特許023の課題が「ペダル板にギター効果装置を搭載すること」であるとの審判部による認定に同意しなかった。CAFCは、ギター効果装置が本発明以前に既にペダル板に搭載されていたため、これは本発明の適切な課題にはなり得ないと結論付けた。またCAFCは、審判部が特定した特許023により解決すべき課題又はその目的は、当該特許の技術分野と非常に密接に結びつけられているため、当該技術分野以外の全ての引例に関する検討を事実上排除することになると結論付けた。

CAFCはまた、審判部がMullenの解決しようとする課題を特定せず、Mullenが解決した課題と効果ペダル板でのケーブル引き回しという課題とを比較せず、Mullenがこの課題に合理的に関連しているかどうかを評価しなかったと結論づけた。

審判部がMullen特許と023特許との間における明らかな相違点を数多く特定したことについて、CAFCは、たとえ両者の間に明らかな相違点があったとしても、引例は特許に対する類似技術であり得ること、及び、類似する課題の解決に両者が向けられていないことを上記相違点に基づいてどのように立証できるのかを審判部は説明していない、と指摘した。

またCAFCは、当業者が比較的低い技術理解力しか有しておらず、Mullenのリレー技術の理解が不十分であったであろうという審判部による認定についても、見解を述べた。CAFCは、当該技術分野に対する技術理解力は考慮すべき点ではあるが、引例のすべての詳細を完全には理解していなくても、引例の開示内容のうちで自らの課題解決に関連する部分について、有用な情報を収集するために十分な程度に理解できる限り、当該文献を参考にすることは合理的である、と指摘した。

 以上に基づいて、CAFCは、再審理のために手続を審判部に差し戻した。

 本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。

http://www.cafc.uscourts.gov/sites/default/files/opinions-orders/20-1104.OPINION.11-9-2020_1682293.pdf

本欄の担当
伊東国際特許事務所
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当: 弊所米国オフィスIPUSA PLLC
米国特許弁護士 Herman Paris
米国特許弁護士 有馬 佑輔

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