最新IP情報

最新IP情報

外国の判決・IP情報速報

韓国特許法等の一部改正案の国会通過

韓国特許法、並びに不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、「不競法」という)の一部改正案が2024125日に韓国国会を通過したことについて、ご案内申し上げます。

 

 その主な改正内容は、以下のとおりです。

 

1.いわゆる、懲罰的な損害賠償責任の強化

 韓国では、20197月から、他人の特許権(専用実施権を含む)や、アイディア又は営業秘密を故意に侵害した者の損害賠償責任について、続いては、202010月から、他人の意匠権(専用実施権を含む)又は商標権(専用使用権を含む)を故意に侵害した者の損害賠償責任について、それぞれ算定損害額の最大3倍まで認めることが可能となっております。

 そのうち、他人の特許権(専用実施権を含む)や、アイディア又は営業秘密を故意に侵害した者の損害賠償責任については、今回の特許法及び不競法の改正により、認定損害賠償額が算定損害額の最大5倍まで増加することになります。

 なお、侵害者の故意の有無を判断する際に考慮すべき事項に関しては、ⅰ)侵害者が優越的な地位にあるかどうか、ⅱ)故意、または損害発生の可能性を認識した度合、ⅲ)侵害行為により権利者が受けた被害の規模など、現行の要件から変わりありません。

 

2.不競法における権利保護の強化

 また、今回の改正不競法によると、同法律に定まる不正競争行為や営業秘密侵害行為を起こした者への罰則等が以下のように強化されます。

 ⓐ 不正競争行為や営業秘密侵害行為に関わった侵害品や製造設備等を没収できるとする規定が新たに設けられ、

 ⓑ また、不正競争行為や営業秘密侵害行為を起こした法人への罰金を、行為者個人に比べて最大3倍まで課することができるようになり、且つ、

ⓒ 営業秘密侵害行為を起こした法人への刑事訴追について、その公訴時効が10年に延ばされます。

 

3.コメント

 まず、損害賠償額を更に拡大したのは、侵害訴訟にかかる多大な費用や時間、努力を考えると、侵害抑制および(特に中小規模以下のスモールエンティティ企業等の)権利者への救済といった、損賠賠償額を引き上げた当初の立法目的が十分には達成されていないという懸念の声を受け入れたものであって、知財制度のバランスや活用促進の面で、主要国のなかでも進んだ措置と言えると考えられます。

 また、技術等の変遷や進化により発生しうる新しい侵害態様への対応を含め、様々な形の知的創作物に対し的確に保護可能な策として期待される不競法に、今回取り入れられた権利保護強化の運用についても、今後注目です。

 

 係る改正法律案は、来月中に公布されてから6ヵ月後である2024年8月中より施行される予定であって、施行日以降に起こった該当行為には、改正罰則等が適用されます。

 

 なお、上記の韓国語での情報は、

https://likms.assembly.go.kr/bill/billDetail.do?billId=PRC_T2V3Y1J1J2B9V1J8A0F6Q0R1G3Q2E4

及び、

https://likms.assembly.go.kr/bill/billDetail.do?billId=PRC_R2X3B1H1W2U9R1W7T3Q2C5L8A7U4V3

から入手することができます。

本欄の担当
伊東国際特許事務所
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当:韓国弁理士 柳光熙
PAGE TOP