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中国特許審査指南の改正案(意見募集案)
2025年4月30日に中国国家知識産権局(CNIPA)は、『特許審査指南改正草案(意見募集案)』を公表しました。
意見募集の期限は2025年6月15日です。
CNIPAの公式の説明により、今回の審査指南改正案(意見募集案)のポイントは以下の通りです。
一.方式審査(第1部第1章)
(一)第1部第1章第4.1.2節「発明者」、第4.1.6節「特許代理機関、特許代理師」
1.発明者
現行の願書には、筆頭発明者についてしか身分情報の記載が求められていないが、今回の審査指南改正で「願書には、すべての発明者の身分情報を記載しなければならない」と明定される。
2.特許代理機関、特許代理師
特許代理機関が、その提出する願書に記載されている発明者の身分情報、出願人の身分情報及び連絡先の真実性、有効性について責任を負うべきことが明確化される。
(二)第1部第1章第6.2.1.2節、第6.2.2.2節「優先権の主張の申立て」
第1部第1章第6.2.1.2節、第6.2.2.2節「優先権の主張の申立て」中に「分割出願のもとの出願に優先権の主張がされたが、出願人が分割出願をする際に願書において当該優先権の主張の申立てをしなかったときは、分割出願は、当該優先権の主張がなかったものとみなし、審査官は、優先権の主張がなかったものとみなす旨の通知書を発送しなければならない」と明定される。出願人は、第1部第1章第6.2.6.1節の規定に基づいて優先権の回復を請求することができる。
二.実体審査(第2部第1章、第3章、第4章、第9章、第10章)
(一)第2部第1章第4.4節のうち保護対象となる植物の品種に関する内容
植物のイノベーションに関する知的財産保護の強化を求めるイノベーション主体の声に応えるため、特許権の保護と植物新品種権の保護との合理的かつ有効な繋がりが形成され、今回の審査指南改正では「植物」の定義が削除され、「植物の品種」の定義が追加される。この「植物の品種」の定義は、『中華人民共和国種子法』にいう植物の品種の要件とも一致しており、植物新品種権の保護を受けることができない育種材料が特許権を付与されることができるようになる。
(二)第2部第3章第6節のうち同様の発明創造の取扱いに関する内容
同一の出願人が同日(出願日をいう。)に同様の発明創造について実用新案特許を出願し、発明特許も出願する(以下「同日出願」という。)ケースをさらに規律するため、今回の審査指南改正では、第2部第3章第6節「同様の発明創造についての取扱い」のうち、第6.1節「判断の原則」、第6.2.2節「1件の特許出願と1件の特許権についての取扱い」の規定が整備される。改正の内容には、次の点が含まれる。第1に、出願人の申立てに基づいて同日出願が同様の発明創造であるか否かが認定される。第2に、発明特許権が付与されるには、既に取得した実用新案特許権を放棄しなければならず、そのようにしなければ発明特許権は拒絶されるという同日出願の取扱方式が明らかにされる。
今回の改正の内容は、特許法第9条第1項、特許法実施細則第47条中の発明特許出願と実用新案特許権とが併存する際の取扱いルールとの一致性が強調されていて、同日出願された発明と実用新案とが同時に権利付与されることによってもたらされる後続の特許権の維持、権利行使等に伴う問題を低減しており、審査リソースの節約、出願人の負担の軽減、同日出願の審査結果に対する公衆の予測可能性向上に資するものとなっている。
(三)第2部第4章第6節のうち進歩性に関する内容
進歩性の条文の法的意義と本質的要求をさらに明らかにして、特許出願と審査の質の向上を促進するため、今回の改正では、第2部第4章第6節「進歩性の審査に際して注意すべき問題」のうち第6.4節の規定が整備される。改正の内容には、次の点が含まれる。第1に、技術的課題の解決に寄与する(技術的)特徴が請求項中にないときは、一般的に、保護を求める発明に進歩性がもたらされず、当該発明の進歩性の高さが引き上げられることもないことが明らかにされ、一つの例示よりこの原則が解説されている。第2に、文章の表現に適宜の調整がされている。
今回の改正は、出願書類の記載と進歩性の審査において注意すべき問題をさらに明確化して示すものにすぎず、進歩性を評価する上での方法と考え方に変化はない。進歩性とは、発明の高度さについての法律上の要件であるが、今回の改正では、進歩性を評価するに際して、請求項に限定されている技術的解決手段の全体を考慮した上で当業者の観点から発明の実質を正確に把握し、権利付与される請求項と先行技術に対する発明の真の寄与とがつり合っていることが確保されるべきことが強調されている。
(四)第2部第9章第6節のうち人工知能等に関する内容
1.同節で規律される分野の明確化
現行の審査指南における同節の見出しは「アルゴリズムの特徴又はビジネスモデル及び方法の特徴を含む発明……」であるが、この見出しは、出願書類の記載の特徴の観点から付されたものである。この見出しが「人工知能等に係る発明……」と改正され、同節で規律される分野が明確化される。
2.特許法第5条に関する審査基準と例示の追加
(1)人工知能、ビッグデータ等に関する出願の審査対象の明確化
特許法第5条についての審査対象は出願書類である。今回の改正では、特許法第5条に関する審査基準と例示が追加されているので、「必要なときは、明細書の内容について審査しなければならない」という表現が追加されている。
(2)特許法第5条についての審査の規定の新設
出願書類に記載されているデータ収集、タグ管理、ルール設定、意思決定推奨等の内容が法律、社会道徳に違反し、又は公益を害するとき、当該出願には、特許法第5条第1項の規定に基づき特許権が付与されない。
(3)法律の規定に違反し、社会道徳に違反するものの審査の例示の新設
「ビッグデータによるショッピングモール内のマットレス販売支援システム」の例が追加されている。この例では、データを収集し、処理する等の過程でいずれも関係法律の規定を遵守しなければならず、特に、既に識別され、又は識別され得る自然人に関する個人情報について、その収集及び識別の手段は公共の安全を維持するために必要なもの又は個人の単独の承諾を得たものでなければならず、そのようなものでなければ『中華人民共和国個人情報保護法』の関係規定に違反すると説明されている。
「無人運転車両の応急意思決定モデルの確立方法」の例も追加されている。この例では、人工知能等の技術の実施に倫理道徳観念に反するものがあれば、特許法第5条第1項に規定する社会道徳に違反する発明創造に該当し、特許権が付与されないと説明されている。
3.典型的事例に依拠した進歩性審査の規範明確化
「屑鉄の等級を区分するニューラルネットワークモデルを確立する方法」の例が追加されている。この例の解決手段で解決しようとする技術的課題及び採用されている手段は、引用文献1で解決しようとする技術的課題及び手段といずれも同一ではない。この例では、屑鉄の形状及び厚さを識別可能とするために、屑鉄の色、縁及び模様等の特徴を抽出することを要し、また、抽出し、学習する特徴も異なるので、畳み込み層とプーリング層の回路数と階層設定にもそれに応じて調整と改良がされている。これらのアルゴリズムの特徴と技術的特徴は、機能上互いに支持し合って相互作用関係があるので、このアルゴリズムの特徴が技術的解決手段に対してする寄与を考慮しなければならない。
「船舶数を識別する方法」の例も追加されている。この例の解決手段は、通常の深層学習方式を採用してモデル学習をすることで船舶数を識別するものであるが、識別対象が異なるために深層学習とモデル学習の過程において学習方式、モデリング階層等に何らかの改変がされていることが請求項に示されていなかった。引用文献1に開示されている果実数を識別する方法と対比しても、画像上の船舶データに対してラベル付けすることと画像上の果実データに対してラベル付けすることとで、学習に用いるデータセットを得てモデル学習をするものであり、技術的な困難を克服することを要しないので、解決手段として進歩性を備えるとはいえない。
4.明細書の十分な開示の記載要件及び例示の追加
(1)十分な開示に関する記載要件の追加
人工知能のアルゴリズム又はモデルには「ブラックボックス」の問題が存在し得るので、明細書は、十分な情報を記載して十分な開示の目的を達するものでなければならない。今回の改正では、人工知能に関する発明特許出願によくある2つのケースについて、第6.3.1節で明細書の具体的な記載要件がさらに明確化され、出願の質の向上を促進するものとなっている。
(2)十分な開示の要件を充足するか否かについての審査の例の追加
第6.3.3節が新設され、同節に2つの例示が追加される。
「顔の特徴を生成するための方法」の例は、顔画像生成結果の正確さを向上させるという技術的課題を解決するため、第1畳み込みニューラルネットワークに空間変換ネットワークを設け、顔画像の特徴領域の特定に用いるものであるが、明細書には、当該空間変換ネットワークの第1畳み込みニューラルネットワークにおける具体的な位置が記載されていない。この例において、空間変換ネットワークが一つの全体としてモデルの任意の位置に挿入されてもよく、その画像の特徴領域を認識する能力に影響せず、いずれも上記の技術的課題を解決可能であることは、当業者の知るところであるので、この発明特許出願で保護を求める解決手段は、明細書に十分に開示されているものである。
「生体情報により癌を予測する方法」の例は、悪性腫瘍の予測正確性を向上させるという技術的課題を解決するため、学習済みの悪性腫瘍の強化スクリーニングモデルを用いて血算、生化学検査指標及び顔画像の特徴をともにスクリーニングモデルの入力とし、悪性腫瘍罹患予測値を導き出そうとするものである。しかしながら、明細書には、具体的にいずれの指標が腫瘍に関係するのかが記載されておらず、当業者にもいずれの指標が悪性腫瘍の判断に用いることができるかを特定することはできず、顔の特徴と悪性腫瘍の罹患との間に関連があるか否かも特定されないので、この発明特許出願で保護を求める技術的解決手段によっては上記の技術的課題を解決することはできず、明細書は十分に開示されていない。
(五)第2部第9章第7節のうちビットストリームを含む発明特許出願の審査に関する規定
ストリーミングメディア産業が急速に成長している新たな動向に順応し、ストリーミングメディアに関連する技術と適用場面が進化し続けることによる新たな変化に適応し、ストリーミングメディアの産業リンケージにおける生成、記憶、伝送等の複数の場面で特許の保護のさらなる強化を求めるイノベーション主体の声に応え、国際的な高標準の特許審査及び保護のルールと積極的に一体化させるため、第2部第9章に第7節「ビットストリームを含む発明特許出願の審査に関する規定」が追加される。
主な内容として次のものが含まれる。
1.ビットストリームを含む発明特許出願の保護対象についての審査
(1)ビットストリームを含む発明特許出願に特許権が付与されない場合の明確化
第7.1.1節の規定によれば、ある請求項の主題が単純なビットストリームにしか関係しないときは、特許の保護対象に該当しない。ある請求項について、その主題の名称以外に限定されているすべての内容が単純なビットストリームにしか関係しないときも、特許の保護対象に該当しない。
(2)ビットストリームを含む発明特許出願に特許権が付与される場合の明確化
第7.1.2節の規定によれば、デジタルビデオエンコード・デコードの技術分野において、ビットストリームを生成する特定のビデオエンコード・デコード方法が特許法上の意義における技術的解決手段に該当するときは、当該ビデオエンコード・デコード方法により限定されている、当該ビットストリームを記憶又は伝送する方法、及び当該ビットストリームを記憶するコンピュータ読取り可能な記憶媒体は、特許の保護対象に該当する。
2.ビットストリームを含む発明特許出願の明細書の記載要件の明確化
第7.2節で次のように明らかにされている。明細書には、ビットストリームを生成する特定のビデオエンコード・デコード方法を十分に開示しなければならない。当該ビットストリームを記憶又は伝送する方法、及び当該ビットストリームを記憶するコンピュータ読取り可能な記憶媒体の主題に関係するのであれば、明細書にも相応の説明をして請求項を裏付けなければならない。
3.ビットストリームを含む発明特許出願の特許請求の範囲の記載要件の明確化
第7.3節で次のように明らかにされている。特定のビデオエンコード・デコード方法により生成されるビットストリームを含む発明特許出願については、方法、装置又はコンピュータ読取り可能な記憶媒体の請求項として記載することができる。出願人は、1件の発明特許出願の特許請求の範囲において、原則として、当該ビットストリームを生成する特定のビデオエンコード・デコード方法の請求項を基礎として、当該方法の請求項を引用するか、又は当該方法のすべての特徴を含める方式により、これに対応する記憶方法、伝送方法、コンピュータ読取り可能な記憶媒体の請求項を記載しなければならないとされる。また、具体的な記載例も示されている。
なお、従来の通信業界の産業リンケージが集中しているのは異なって、ストリーミングメディア業界の産業リンケージは分散しており、生成、記憶、伝送等の複数の場面と主体が存在している。従って、同節の内容は、ストリーミングメディア産業の複数の場面で関係する技術的主題の保護について、ストリーミングメディア産業の新たな動向と新たな変化とに適応するものであるが、それらのうち一つの場面で権利を主張する選択肢を権利者に提供している。そのようにすることで、権利者と実施者と公衆との利益のバランスを図って産業の持続可能な発展を確保し、権利者がその産業の複数の場面で権利を主張してその技術的寄与に見合わないライセンス収益を得ることが容認されないようにしている。
(六)第2部第10章第9節のうち保護対象となる植物の品種に関する内容
現行の審査指南第2部第1章第4.4節に規定されている「植物」の定義が第2部第10章第9節「生物技術分野の発明特許出願の審査」に追加され、ここでいう「生物材料」に含まれる「植物」の解釈に用いられる。
今回の審査指南改正では、植物の品種の範囲が明確化された上で、第2部第10章第9.1.2.3節「動植物の個体及びその構成部分」において次のような改正がされている。第1に、関連する植物が科学的発見に該当するか否かの判断原則が追加される。第2に、植物の単一株及びその繁殖素材が植物の品種に該当することに関する表現が適宜削除され、植物の品種の区別性、均一性及び安定性という『中華人民共和国植物新品種保護条例』の関係規定に適合する判断原則がさらに追加される。第3に、「人工的な選別・育成を経て、又は発見された野生の植物に改良を加えて得られた植物及びその繁殖素材」が区別性、均一性及び安定性を有しないときは、特許法上の意義における植物の品種には該当しなくなることが明らかにされているが、イノベーションの成果が反映された育種の中間素材が特許による保護の範疇に入ることが強調されている。
第2部第10章第9.1.2.4節「遺伝子組換え動植物」中の遺伝子組換え植物が植物の品種に該当する場合に関する表現が適宜調整され、それ自体が植物の品種の範疇に該当するときは、特許の保護対象に該当しないと明確化される。
三.国内段階に移行する国際出願の審査(第3部第1章、第5部第2章)
(一)第2部第1章第5.2.3.2節「優先権を有することの証明の提出」
現行の審査指南には「証明書類は、譲渡人が署名又は押印しなければならない」と規定されており、譲渡人が先の出願の出願人全員であるか否かについて出願人に異なる理解が生じ得ていたので、同節中の「譲渡人」が「先の出願の出願人全員」と改められ、審査指南第1部第1章第6.2.2.4節及び第3部第1章第5.2.6節の表現と一致するようにされる。
(二)第3部第1章第7.3節「その他の特別な手数料」、第5部第2章第1節「手数料納付の期間」
配列表に係る出願追加料の算定ルールがさらに明確化され、次の点で改正がされる。第1に、第5部第2章第1節に「所定のフォーマットに沿って提出されたコンピュータ読取り可能な形式の配列表については、頁数を計算しない」と規定される。第2に、第3部第1章第7.3節中の400頁を超える配列表の手数料算定に関する規定が削除される。なお、紙形式により提出される通常の国内出願については、なお紙形式の配列表の頁数により出願追加料が算定される。
四.拒絶査定不服審判請求と無効審判請求の審査(第4部第1章、第3章)
(一)第4部第1章第6.2節「審決の構成」
今回の改正では、審決の構成内容について、同節に掲げる内容が審決の通常の構成内容であって、固定的な構成内容ではなく、事件の事情に応じて簡素化又は省略しても差し支えないものであることが全体的な要求において明確にされる。拒絶査定を取り消す旨の審決の事件の概要についてのみ簡素化又は省略するという規定が具体的な内容から削除され、全体的な要求と整合するようにされる。これらの調整により審決の内容の規律性が確保された上で、実質的な争いの解決がより重点的に示され、審査の質と効率が向上される。
(二)第4部第3章第3.2節「無効審判請求人の適格」
「真正の意思表示」は、法律行為を構成する基本的な要素であり、法律行為が有効であるための基礎的要件であるが、実務においては、他人の名義を冒用して無効審判請求が提起されるケースも発生している。このような場合、無効審判請求はその請求人の真正の意思表示によらずになされ、虚構の請求書や委任文書等の関係資料を作り上げる行為が伴うこともしばしばである。これらの行為は、信義誠実の原則に反し、特許の無効審判制度の信頼性と市場競争秩序を害するものである。
これらの行為を規制するため、無効審判請求人の適格の確認に関する部分に一つの事由が追加されて、無効審判請求の提起が請求人の真正の意思表示でないときは、受理しないことが明定される。なお、これは、原則を先にして具体的事情を後にする不受理事由の順序に従って第2号に位置付けられる。
(三)第4部第3章第3.3節「無効審判請求の範囲並びに理由及び証拠」
同節第2号に無効審判手続における「一事不再理」の原則が規定される。そのうち、「同様の理由及び証拠」については、例えば、無効審判の理由又は証拠に形式的な簡単な調整や改変がされただけで、法律事実の上では実質的に同一である場合も「一事不再理」の原則により規制される範疇にあたるとされるように、理論と実務において「理由及び証拠が同一又は実質的に同一である」ことと広く解されていた。今回の審査指南改正では、このことが明確にされて、適法かつ合理的に無効審判請求をする請求人の権利が保障されるとともに、特許権者が不必要な乱訴の弊を受けることがないようにされる。
(四)第4部第3章第4.6節に第4.6.4節「訂正書類の提出」の追加
今回の改正では、「訂正書類の提出」の節が新設されて、無効審判手続において特許請求の範囲の訂正書類を提出する際の形式的要件及び関連する手続ルールが明確化され、無効審判手続において訂正書類の形式上又は手続上の不備により特許権者の権利が害されることがないよう助けるものとなっている。
訂正書類を提出する形式については、第2部第8章第5.2.4.1節の実体審査手続中の補正に関する「差替頁の提出」の規定が参照されて、特許権者は無効審判手続においても「全文の差替頁及び補正対照表を提出」する方式を採用すべきことが明確化され、請求項を補正する方式及び内容が明確に説明されている。
特許権者が同一の無効審判請求の審理手続において提出する複数の訂正書類がいずれも第4.6.3節の規定に適合する場合について、今回の審査指南改正では、特許権者が最後に提出した訂正書類を審査書類とし、その他の訂正書類は放棄されたものとみなすことが明定される。この改正により、双方の当事者は、審査書類の決定について明確な予測ができるようになる。
五.特許出願及び事務処理(第5部第2章、第7章から第9章)
(一)第5部第2章第4.2.1節「還付における原則」
還付の正確性及び適時性を確保し、当事者の利益を守るため、特許庁は、当事者による還付の請求に記載されている最新の情報(銀行口座又は住所)に基づいて還付をすることとされるので、第5章第2章第4.2.1.2節「特許庁が自ら還付する場合」の全部の内容が第4.2.1.1節「当事者が還付を請求することができる場合」に移される。
(二)第5部第7章第8節「審査の順序」
1.一般原則
今回の改正では、第8.1節「一般原則」に「出願人の請求により、特許出願に対し、優先審査、快速審査又は繰延審査を含むオンデマンド審査をすることができる」という表現が追加され、遅速混合の「マルチトラック制」の審査モデルにより産業界及び出願人の実際のニーズを十分に満たすオンデマンド審査の理念が反映されている。
2.快速審査
国家級知的財産保護センター及び快速権利行使センターが快速審査の業務において重要な役割を発揮しているので、今回の改正では、第8.3節「快速審査」に関する内容が追加され、その予備審査を通過した特許出願に快速審査がされる手続及び要件が明らかにされている。
(三)第5部第8章第1.3.2.6節のうち期間補償がされる特許の公開内容
第5部第8章第1.3.2.6節「特許権の期間の補償」中の「特許権の期間が満了する日」が「特許権の期間が満了して消滅する日」と改められる。
(四)第5部第8章第1.3.2.7節「特許実施許諾契約の届出の効力発生、変更及び抹消」
第5部第8章第1.3.2.7節「特許実施許諾契約の届出の効力発生、変更及び抹消」中の「譲渡人」が「許諾者」、「譲受人」が「被許諾者」とそれぞれ改められ、用語の表現が関連の法律及び規範的文書と一致するようにされる。
(五)第5部第9章第1.2.1節「特許証の構成」
第5部第9章第1.2.1節「特許証の構成」に、国際出願又は分割出願の「特許証に記載されている特許出願日の時点における発明者又は創作者の氏名、出願人の氏名又は名称」についての解釈、説明が追加される。
(六)第5部第9章第2.2.1節のうち特許権の期間補償に関する内容
拒絶査定不服審判の手続において特許出願書類が補正されることなく、請求人が陳述した新たな理由又は提出した新たな証拠に基づいて拒絶査定が取り消された場合は、特許法実施細則第78条第3項第3号に規定する合理的な遅延に該当することが明確にされる。そのうち、新たな理由又は新たな証拠とは、これらの理由又は証拠を出願人が実体審査手続において提出しなかったもの、つまり、当該理由が拒絶査定の下される前に主張されなかったものをいい、当該証拠が拒絶査定の下される前に提出されなかったものをいう。請求人が拒絶査定不服審判の段階で陳述した新たな理由又は提出した新たな証拠に基づいて拒絶査定を取り消す審決が下されたが、請求人が拒絶査定不服審判の段階で審査が法定の手続に違反していることを主張して拒絶査定の取消しを請求し、合議体が法定手続違反のみを理由として拒絶査定を取り消したときは、新たな理由の範囲に入らない。
なお、特許審査指南改正草案(意見募集案)の詳細(中国語)は、https://www.cnipa.gov.cn/art/2025/4/30/art_75_199472.html にて入手することができます。
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITOH
所長・弁理士 伊東 忠重
副所長・弁理士 吉田 千秋
担当:Beijing IPCHA
中国弁理士 張 小珣
翻訳:中国チーム 弁理士 畠山 敏光