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特許庁 仮想空間上の物品画像について、用途・機能を考慮した類否判断を行う方向で検討
2025年5月22日に特許庁は、第19回産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会を開催されましたので、以下のとおり、報告申し上げます。
概要
1.仮想空間におけるデザインに関する意匠制度の在り方について
<これまでの検討経緯>
制度的措置として、「仮想空間におけるデザインを現行の登録可能類型(操作画像及び表示画像)に加え、物品等の形状等を表した画像を保護対象とするもの」を軸として検討を進めることとなりました。
<今次委員会における検討内容>
◆保護され得る画像及び意匠の認定と類否判断の基本的な考え方
「仮想空間上の物品等の形状等を表した画像」を保護対象とし、現行意匠制度と同様に、画像として表された物品の用途・機能を認定(例:指輪の形状をした画像の場合,装身機能)のうえ、類否判断を行う点が提案されました。
<主な議論>
上記提案内容に対して賛成意見が多数の中、下記の指摘もございました。
・形状等が共通していても、用途及び機能を変更することで、侵害が回避されてしまうことも起こり得るため、権利行使も含め、総合的に検討すべき。
・仮想空間上では、用途及び機能の制限がないことを考慮すれば、仮想空間独自での類否判断もあるのではないか。一方で、クリアランス負担への配慮も重要である。
特許庁側からは、仮想空間上での実態を踏まえた上で、用途及び機能をどのように認定していくか、継続して検討していく旨の説明がありました。
2.生成AI技術の発達を踏まえた意匠制度上の適切な対応について
<令和6年度調査研究の結果等を踏まえた検討事項>
① 意匠該当性、② 創作者、③ 引用意匠適格性、④ 新規性喪失の例外、⑤ 創作非容易性、及び⑥ 記載要件。
<今次委員会における検討内容>
◆上記の検討事項を分析し、①~④を優先的に整理する点が提案されました。
<主な議論>
上記提案内容に対して全員が賛成しました。その他、下記の意見がありました。
・生成AIは、プロンプトを繰り返すことで、永遠に作り続ける。⑤も重要。
・著名な製品は、モデルチェンジ予想等、多くの画像を提供し合うような場もあり、④の優先度は高い。
3.まとめ
今回の議論を踏まえて、次回以降も引き続き検討していくこととなりました。
なお、次回(6月予定)は、今回の2つのテーマの未審議論点の検討に加え、これまでの検討経緯をまとめた報告が予定されています。
意匠制度小委員会の資料等につきましては、特許庁WEBページの下記URLをご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_shoi/index.html
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITOH
所長・弁理士 伊東 忠重
意匠部 弁理士・担当部長 北代 真一