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韓国最新改正法
韓国特許庁は、特許法および実用新案法施行規則の一部を改正し、2025年7月11日より施行することを発表しました。 当該改正により、i ) 意見書提出期間 ii ) 審査猶予対象に係る制度が変更されました。
その主な改正内容は、以下のとおりです。
1. 意見書提出期間の延長
審査官が発行する意見提出通知書に対する意見書・補正書の提出期間が、従来の「2ヵ月」から「4ヵ月」に延長されます。韓国の従来の意見書提出期間は2ヵ月であり、日本・米国が3ヵ月、中国・EPOが4ヵ月と比較して主要国と比較して短いものでした。これにより、出願人は意見書提出の準備により十分な時間を確保でき、従来必要であった延長申請や手数料の負担も軽減されます。延長後も、必要に応じて1ヵ月単位 、またはそれを超える期間の延長申請制度は維持されます。適用開始は、2025年7月11日以降に発行される意見提出通知書に適用されます。
2. 分割出願に対する審査猶予申請の導入
従来、分割出願は、審査保留制度の対象外とされていましたが、今回の改正により分割出願でも審査猶予が可能となります。通信・製薬・バイオなどの分野では、商用化に時間を要するため審査時期を戦略的に遅らせたいニーズが高まっていましたが、分割出願では従来、審査猶予の申請が認められていませんでした。なお、審査猶予は、審査請求日から9ヵ月以内に申請し、審査請求日から2年後から、出願日から5年以内の間(ただし、実用新案は3年以内)の審査開始時点を指定でき、その希望時点から12ヵ月以内に審査結果が提供されます。適用開始は、2025年7月11日以降の分割出願に加え、同日以前に出願された分割出願にも遡及適用されて申請可能です。
3. 留意事項
意見書提出期間の延長については、拒絶査定通知に対する対応期間(3ヵ月)に変更はありません。審査猶予については、審査猶予申請を適切に活用することにより、製品商用化時期に合わせた権利確保戦略の構築が可能となります。
- 商標異議申立期間の短縮について
商標の異議申立期間が、従来の「公告日から2ヵ月以内」から「公告日から30日以内」に短縮されます。異議申立の割合が1%未満と非常に低く、長期間の公告によって登録手続が不必要に遅延しているとの指摘を受けたことを背景とした制度改善の一環です。異議申立書は公告日から30日以内に提出する必要がありますが、理由書や証拠はその後30日以内に追加提出可能です。外国人については、最大60日まで延長が認められます。。この改正により、商標公告に対するモニタリングはこれまで以上に高頻度で行うことが推奨されており、迅速な社内判断体制の整備もあわせて求められています。なお、異議申立とは別に、第三者意見制度を活用して意見を提出することも引き続き可能です。本改正は、2025年7月22日より施行されます。
- 実施行為および存続期間延長制度に関する法改正の施行について
すでにご案内のとおり、改正された i ) 実施行為の定義に関する規定 ii ) 特許権の存続期間延長制度が、2025年7月22日より施行されます。本改正により、 特許・実用新案・意匠に関して、「韓国内からの輸出行為」が実施行為に含まれることとなりました。また、存続期間延長は1つの特許につき1回限りとされ、延長期間も許可日から起算して最大14年までに制限される新制度が導入されます。
- その他 – 共に民主党所属の李在明候補、韓国の第21代大統領に選出
2025年6月3日に実施された大統領選挙において、共に民主党の李在明候補が当選し、大統領に就任しました。以下は、就任直後に発表された主な政策の方向性です。李在明政権の全体的な政策方針において、知的財産権に関する直接的な言及は多くは見られないものの、AI・バイオなどのR&D集約分野への国家的投資を通じて、技術の保護と活用基盤を強化しようとする意図が明確に示されています。また、原子力と再生可能エネルギーの適切なバランスを図りつつ、エネルギー自立と気候変動への対応を両立させる政策も推進されており、知財・技術政策が今後の産業政策の中で重要な位置を占めると予想されます。なお、共に民主党が国会の過半数を占めていることから、これらの政策は実行力を伴うものとして注目されています。
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITОH
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当: 韓国弁理士 金 世永