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中国2024年度知財年報に関する速報

2025年8月27日、中国国家知識産権局(CNIPA)は「2024年度報告」を公表しました。本報告書は、専利・商標・地理的表示・集積回路配置設計等に関する審査、権利付与、統計の状況を総合的に取りまとめています。本速報では、その主要なポイントをご紹介いたします。

 

一、専利

(一)審査

CNIPAは「国家の要請と利用者の満足度」を理念に掲げ、品質を優先しつつ審査効率の改善を図りました。

  • 平均審査期間:発明専利の平均審査期間は15.5か月となり、「十四五」計画の目標(15か月)に接近しました。
  • 優先審査:2024年は合計21.8万件の専利出願が優先審査を受け、そのうち発明専利が21.6万件で前年比57.6%増でした。
  • 審査品質:発明専利審査結案の正確率は95.2%、ユーザー満足度指数は86.8と15年連続で「満足区間」を維持しました。

 

(二)専利権の付与件数

  • 発明専利:104.5万件(前年比13.5%増)
     そのうち、国内は93.8万件(全体の89.8%)となっています。職務発明が98.4%を占めました。
  • 実用新案専利:201.0万件(前年比3.9%減)
  • 意匠専利:64.3万件(前年比0.8%増)

(三)有効な発明専利

2024年末時点で有効な発明専利は568.9万件(前年比14.0%増)、そのうち、国内は475.6万件(83.6%)、国外は93.3万件(16.4%)。

 

(四)PCT国際出願

  • 受理件数:7.5万件(前年比1.2%増)(6.9万件は中国国内出願人によるもの)。
  • 累計(1994年以降):74.3万件。
  • 中国の国内段階に移行した出願:10.0万件(前年比5.4%減)(発明専利が9.9万件)。
  • 省市別の受理件数上位:広東省(23,387件)、北京(12,088件)、上海(6,822件)。

 

(五)ハーグ意匠

中国出願人によるハーグ協定に基づく国際意匠出願は2,223件、また中国を指定した国際意匠出願は2,470件。

 

(六)審判

  • 復審請求(拒絶査定不服審判):97,141件(前年比8.5%減)(92.7%が発明専利)。

審理終結件数は57,726件。

  • 無効宣告請求:9,091件(前年比4.0%増)。

審理終結件数は9,479件(前年比23.8%増)、審理終結までの平均期間は5.9か月。

二、商標

(一)審査

  • 商標登録出願の審査件数:667.5万件。審査期間は平均4か月、登録完了までの平均期間は7か月。
  • 審査の抽出検査(品質検証)における適合率は97%以上を維持。
  • 「商標登録出願快速審査弁法」に基づき、2024年は515件が早期審査の対象。

 

(二)登録

  • 商標登録件数:478.1万件(前年比9.1%増)
      そのうち、国内は463.9万件(97%)、国外は14.1万件(3%)。
  • 登録査定結果:登録査定53.9%、一部拒絶32.0%、拒絶査定14.1%。

 

(三)有効な商標

  • 有効な登録商標(存続中):4,977.7万件(前年比7.9%増)。
      そのうち、国内は4,762.0万件(95.7%)、国外は215.6万件(4.3%)。

 

(四)マドリッド国際登録

  • 中国出願人によるマドリッド国際出願:7,039件(前年比13.6%増)、世界第3位。
  • 累計有効登録件数:6.1万件(前年比8.0%増)。
  • 主な指定国:タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、米国、日本、EU等。

 

(五)異議申立

  • 商標登録に対する異議申立件数:12.2万件(前年比6.0%増)。
  • 審理件数:10.3万件、平均審理期間は10か月以内。成立率(全部成立・一部成立を含む。)は63.1%。

 

(六)審判

  • 各種審判請求件数:41.6万件(前年比1.2%増)。
  • 審決件数:38.3万件(前年比2.6%増)。
  • 平均審理期間:復審(拒絶査定不服審判)は6.5か月、その他の複雑案件は10.5か月。

三、地理的表示(GI)

  • 2024年に新規認定された地理的表示製品:36件。
  • 新たに認可された使用主体:8,680社。
  • 累計:地理的表示製品2,544件、使用主体3.2万社以上。
  • 集体商標・証明商標としての新規登録:125件。累計7,402件(国外関連230件)。
  • 指定商品別では、第31類(果物・野菜等)が最多で3,770件(50.9%)。

四、集積回路配置設計(ICレイアウト設計)

  • 登録出願件数:1.2万件、登録証発行件数:1.1万件。
  • 2001年制度開始以降の累計出願件数は10.5万件、公告・登録証発行件数は8.3万件。
  • 2024年末時点での撤回案件は累計28件、そのうち、当年度の新規は1件、審理終結は25件。

 

五、図表で見る中国2024年度知財年報

・表1 発明専利・実用新案専利・意匠専利の付与件数(2024年)

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・表2 中国国内における発明専利の付与件数 上位10社(2024年)

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・表3 外国企業による発明専利の付与件数 上位10社(2024年)

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・表4 商標関連データ(2024年)

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実務上の留意点

2024年度報告の内容を踏まえ、日本企業が中国における知財活動を行うにあたり、次の点にご留意いただくと有益かと存じます。

  • 出願段階での完成度を高めること

発明特許の審査期間が短縮され、審査判断の正確性も向上しているため、OA(拒絶理由通知書)は減少傾向にあります。その一方で、復審(拒絶査定不服審判)の成功率は低下傾向にあるため、出願段階から請求項の構成やサポート要件をあらかじめ丁寧に検討されることが望ましいと考えられます。

  • 優先審査制度・マドリッド制度の活用

中国では特許・商標の優先審査制度やマドリッド国際登録制度が広く利用されています。日本企業にとっても、重要な案件についてはこれらの制度を活用することで、迅速かつ効率的な権利化につながる可能性があります。。

  • 無効審判・異議申立への備え

無効審判や商標異議申立の件数は増加傾向にあります。権利行使やブランド戦略を考える上では、防御的な視点からのポートフォリオ構築や、異議・無効手続を戦略的に活用することも一案となり得ます。

  • GI・ICレイアウト設計の保護

農産品や食品分野では地理的表示(GI)の認定件数が増加し、半導体分野では集積回路配置設計の出願件数も増えています。こうした制度も選択肢に含め、総合的な知財戦略の一部として検討されることが有益かもしれません。

以上を踏まえますと、日本企業が中国における知財活動を進める際には、制度面の最新動向を注視しつつ、権利取得・維持・活用の各段階で柔軟な判断を検討されることが望ましいと考えられます。

 

本件記載の中国2024年度知財年報(中国語のみ)(URL:https://www.cnipa.gov.cn/col/col3562/index.html、最終アクセス日:2025年09月07日)

本欄の担当
弁理士法人ITOH
所長・弁理士 伊東 忠重
副所長・弁理士 吉田 千秋
担当:Beijing IPCHA 中国弁理士 羅 巍

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