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外国の判決・IP情報速報

台湾における「商標の使用」

お客様より多くご質問を頂戴する内容の一つに「商標の使用」があります。本稿では台湾における「商標の使用」につきまとめました。

 

1、台湾における不使用取消審判

商標登録後、正当な理由なく3年間継続して使用されていない登録商標に対し、何人も智慧財産局(Taiwan Intellectual Property Office、以下「TIPO」)に取消審判を請求することができます(台湾商標法第63条第1項第2号)。

 

(1) 近年の動向

2020年~2024年の統計は下表の通りです(1)。台湾では「併存登録の同意書」が受理されるため、同意書が認められない中国に比べると、取消審判の請求件数は多くありません。

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① 審判請求数は2020年にピークを迎えて以降、減少傾向にあります。

② 最終処分件数は、近年行政効率が向上した結果、2024年には800件を超えるようになりました。しかしながら取消成立件数については顕著な増加は見られません。

③ 一方で、「その他」の件数が増加しています。TIPOから理由の公表はありませんが、交渉や和解等を通じて解決する傾向にあること、行政手続上の運用/方針の変化により、最終処分として審決を作成する割合が相対的に低下していることが影響していると考えられます。

 

 

2、台湾における「商標の使用」留意点

 販売促進または取引上の表示を目的として行われていること

② 台湾国内で商品または役務の取引過程において行われた実際の使用であること

③ 上記使用の結果、関連消費者が当該商標を特定の事業者の提供する商品または役務を示すものとして認識できること

④ インターネット上のURLにおいて、登録商標を使用しているWebページの第1階層のドメインが「.tw」である場合は、原則として、台湾市場で、台湾国内の消費者を対象としていると認められます。

  その他の判断要素としては、以下の点が挙げられます。

   ・台湾消費者が実際に閲覧、購入したか

   ・台湾でのアフターサービスや商取引関係があるか

   ・台湾の住所、電話番号が表示されているか

   ・商品役務が台湾で合法的に販売、提供され、価格が台湾ドルで表示されているか

⑤ OEM・ODM生産において、台湾国内で製品が販売されていなくても、台湾で製造された事実及び証拠があれば、台湾における商標の使用と認められます。

 

3、台湾における「使用証拠」

  TIPO公布「註冊商標使用之注意事項」の3.5に使用証拠の例が掲載されています。しかし、これらを提出しただけで自動的に使用が認められるわけではありません。使用時期/使用者/対象商品役務/使用した商標等を証明する必要があります。

 

(1) 使用証拠として認められる例

  ・登録商標が付された商品の実物、写真、包装、容器

  ・看板作成の注文書、内装費の領収書、契約書、出荷伝票、輸出申告書

  ・広告、カタログ、ポスター等の商業書類、営業書類、営業場所の写真

  ・サービス提供の収入証憑(領収書、見積書等)

 

(2) 単体では使用証拠として認められない例

  統一発票(インボイス)は取引完了日時の証明に過ぎません。また、商標は統一発票の様式に必ずしも記載すべき事項ではないため、唯一の使用証拠として採用されません。他の証拠資料と相互に関連付けて、その発票の真実性や信頼性を証明する必要があります。

 

(3) インターネット上で登録商標を使用している場合

  Webページのスクリーンショット、ネット取引記録、顧客とのメール、オンライン広告資料、ネットメディアの報道、プラットフォーム事業者との契約書等が使用証拠として認められます。もちろん、商標/商品または役務内容/使用日付/使用者等の関連情報の表示、または相互に関連付けられる補助資料が必要です。

 

(4) テクノロジー製品で登録商標を使用している場合

  コンピュータプログラムやソフトウェア等のテクノロジー製品は、有形の存在ではなく、販売方法としては、プログラムが記録されたディスクやCD等の実体物によるもの、インターネット経由でダウンロードする方法があります。これらにつき使用の有無を証明する場合は、当該商品やサービスの販売Webページ情報、販売伝票等の商業文書や広告等の関連証拠が必要です。

 

台湾では、不使用取消審判の請求人は、取消を求める指定商品・役務ごとに「不使用」であることの疎明をする必要があります。そのため、通常は調査会社に使用状況の調査を依頼し、その調査報告書を添付するのが一般的です。

しかしながら、調査会社に依頼する場合であっても、請求人自身がWebサイト等で情報を確認することが多いため、不使用取消請求を避けるには、オンライン上での使用状況を整えておくことがとりわけ重要です。

一方、被請求人(商標権者)は、取消請求の対象となった「すべて」の指定商品・役務について、その実際の使用を立証しなければなりません。
そのため、商標権者としては、平常時から各指定商品・役務ごとに適切な使用証拠を備え、確実に保管しておくことが極めて重要です。

 

 台湾におけるブランド戦略の見直し、使用証拠収集・保管等のご相談も承ります。お気軽お申し付けください。

 

<情報提供元>

以下の現地事務所より情報をご提供頂きました。心より感謝申し上げます。

・Lee and Li, Attorneys-at-Law  https://www.leeandli.com/EN/

・TSAI, LEE & CHEN Patent Attorneys & Attorneys at Law  https://www.tsailee.com/?lc=en&

・Top Team International Patent & Trademark Office  https://www.top-team.com.tw/

 

本欄の担当
弁理士法人ITOH
所長 弁理士 伊東 忠重
商標部 弁理士  東 泰成
担当:弁理士 野崎 圭子
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