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各国商標制度 最新情報まとめ
2025年から2026年にかけて、いくつかの国において庁費用および商標制度の変更がございました。本稿では、これらの変更点についてご報告申し上げます。
1、イギリス:庁費用改定
英国知的財産庁(UKIPO)は、近年のインフレ率上昇に対応するため、2026年4月1日より平均25%の庁費用引き上げを実施することを発表致しました。商標関連の庁費用の値上げは1998年以来となります。なお、マドプロ出願経由の個別手数料についても同時に引き上げられます。

・2026年4月1日より前に商標出願を行い、出願料の支払いについて猶予期間を利用して2026年4月1日以降に支払う場合は、旧料金が適用されます。
・更新手数料については、
①更新期限の日付
②実際に更新料を支払う日
の双方によって、新旧料金の適用が決まります。
・遅延更新料については、2026年4月1日以降に納付する場合、常に新料金が適用されます。

・マドプロ出願経由の場合は、
①更新料を2026年4月1日より前に支払う場合 または
②更新期限が2026年4月1日より前であり、実際の支払いが2026年4月1日以降
の場合は旧料金が適用されます。
一方、更新期限及び支払日の双方が2026年4月1日以降となる場合は、新料金が適用されます。
2、ザンビア:新商標法施行
ザンビアでは、2025年12月31日より、新商標法が施行されました。本法の施行は、ザンビアの商標制度を国際基準に沿って近代化する重要な節目となります。
主な変更点は以下の通りです。
①サービスマークの保護導入
②マドリッド議定書の国内法化
③権利期間の標準化(保護期間10年)
④一出願多区分制度の導入
⑤保護対象の拡大(団体商標、地理的表示、音商標等)
⑥著名商標保護の明文化
⑦異議申立・取消・侵害規定の明確化(紛争解決の予測可能性向上)
⑧執行制度の強化(模倣品・侵害対策のための税関措置を含む)
3、アルゼンチン:商標審査基準変更
アルゼンチンでは、商標制度を国際的な実務に近付けるとともに、手続きの迅速化及び予測可能性の向上を目的として、2025年12月11日に審査基準の変更が発表されました。
従来の審査概要は以下の通りです。
・公告後、異議申立がなければ実体審査
・絶対的拒絶理由及び相対的拒絶理由の双方について職権審査
(1) 2025年12月16日から適用された変更点
・商標局は、絶対的拒絶理由のみを審査し、相対的拒絶理由については職権審査を行わなくなりました。
・変更後の拒絶理由の区分は以下の通りです。
<絶対的拒絶理由>
①識別力の欠如
②公序良俗に関する問題
③同一または重複する商品・役務を対象とする先行同一商標(完全同一商標)
<相対的拒絶理由>
①先願または先行登録商標との類似
②混同のおそれのある標識
③第三者の氏名または仮名
④商品識別のため慣用的に用いられる表示
・職権審査の対象外となった相対的拒絶理由は、引き続き無効理由または異議申立理由となりますが、実際に異議申立が行われた場合にのみ検討されることになります。
(2) 2026年3月1日から適用された変更点
・出願直後、公告前に方式審査及び登録可能性審査が行われます。
・審査後に公告されます。
・商標公報への掲載期間は1日のみとなります。
・異議申立期間は従来通り、公告日から30日間です。公告から30日以内に異議申立がなされない場合、出願は登録されます。
なお、異議申立制度に変更はありません。相対的拒絶理由の審査が限定されたこと(先行商標は完全同一のみ審査)により、異議申立が競合商標登録を防ぐ最も重要な手段となります。そのため、モニタリング体制の強化が従来以上に高まるものと考えられます。
また、類似商標との意図しない共存のリスクも高まると予想されます。出願前調査の必要性も従来以上に高まるものと考えられます。
4、UAE:ファストトラック制度
アラブ首長国連邦(UAE)経済観光省によると、2025年上半期の商標登録数は19,957件に達し、2024年上半期(8,711件)と比較して129%の増加となりました。
このような商標出願件数の増加を背景に、商標競争力をさらに高める国家的取り組みの1つとして、ファストトラック制度が創設されています。
ファストトラック制度を利用する場合、庁費用AED 2,250(約97,000円)を支払い、出願時に審査タイプ「Express Examination in 1 day(1日迅速審査)」を選択します(通常の出願手数料AED 750=約33,000円の支払いも必要です)。
なお、本制度は審査段階のみを対象とする制度であり、公告、異議申立(該当する場合)、登録証発行までの期間は従来通りです。
もっとも、審査期間が大幅に短縮されるため、公告および登録段階への移行がより迅速になります。
同時に、庁費用の新設・整理統合及び料金改定も行われています。更新関連手数料については、以下の通り値上げが行われました。
・存続期間最終年内の更新 AED 5,750
(約248,000円。従来はAED 5,000=約215,000円)
・存続期間満了後6か月以内の更新 AED 6,500
(約280,000円。従来はAED 5,750=約248,000円)
今後も、各国の最新の商標制度動向について継続的に情報収集を行い、適宜ご案内して参ります。
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITOH
所長 弁理士 伊東 忠重
商標部 弁理士 東 泰成
担当:弁理士 野崎 圭子
