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米国最高裁判決 MGM Studio, Inc. v. Grokster, Ltd. 事件

 2005年6月27日に、米国特許法第271条(b)に規定する「侵害の誘導」を著作権侵害事件に適用することの可能性を示した最高裁判所判決(全員一致)が出ました。最高裁判所が「侵害の誘導」の著作権侵害事件への適用可能性を判示したのは、本判決が初めてです。
 米国著作権法には、米国特許法第271条(b)「侵害の誘導(Inducement of infringement)」や同条(c)「寄与侵害(Contributory infringement)」に相当する明文規定が存在せず、そのため特許法の規定に基づく侵害理論を著作権法に適用しています。
 本件(MGM Studio, Inc. v. Grokster, Ltd. 事件)において、最高裁判所は以下の一般的判断を下しました。
 著作権侵害のための利用を促進する目的をもって装置(本件ではpeer-to-peer file sharing software)を配布した者は、侵害を助長することの明確な表示を示す証拠がある場合、結果としての被配布者による著作権侵害について責任を負う。
1)著作権侵害を生じさせる意図があり、侵害に適した装置を配布した行為;および
2)その装置の被配布者による実際の著作権侵害行為;
の両方を示す証拠により、著作権の侵害の誘導が成り立つ。
 下級審判決(第9巡回控訴裁判所)は、1984年のSony 事件最高裁判決を本件に適用し、被告Groksterのソフトウエアは非侵害用途があるので、特許法第271条(c)に規定する「寄与侵害」は本件において成立せず、著作侵害に当たらないと判断しました。これに対し、最高裁は、本件は著作権侵害を助長する意図があった可能性がある点においてSony事件とは異なり、「侵害の誘導」により著作侵害が成立する可能性があることを判示し、下級審判決を破棄し、事件を地裁へと差し戻しました。
 本判決は、寄与侵害と侵害の誘導との適用の相違点に関する判示が特許権の侵害事件にも適用可能であるという点において、特許侵害事件について考察する上でも意義があるといえるでしょう。

判決書全文は以下のURLからダウンロード可能です。
本欄の担当
弁理士 大貫進介
弁理士 吉田千秋
弁理士 伊東忠重
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