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米国CAFC判決 Phillips v. AWH Corporation事件

 2005年7月12日に、特許クレームの解釈方法に関し、先例(Texas Digital事件)の判示と異なるCAFC大法廷(en banc)判決(Phillips v. AWH Corporation)が出されました。
 Phillips氏の米国特許第4,677,798号に基づく特許権侵害訴訟事件において、本CAFC判決は、クレームを解釈するにあたり、以下の点を判示しました。
・内的証拠(intrinsic evidence:当該クレームの文言、明細書の発明の説明部分及び審査経過の記録が含まれる)は、外的証拠(extrinsic evidence:専門家等による証言、辞書、学術専門書等の、外部的な全ての証拠である)より重視すべき。
・明細書は、クレーム解釈のための一次的な参酌資料である。
・Texas Digital事件で示された解釈方法は、辞書を重視しすぎている点で不適切である。
 本CAFC判決はさらに、クレームを解釈するにあたり参酌資料を参酌していく順序が大事なのではなく、参酌資料の重要度(weight)が大事であると判示し、米国特許法第112条に基づき、明細書の重要性を強調しました。 その判示によれば、クレーム解釈に当たり参酌資料を重要度の高い順に並べると以下のようになります(最初の3つは内的証拠です)。
[1]クレーム自身  [2]明細書  [3]出願審査経過記録  [4]外的証拠
 上記判示に鑑み、当然ながら、明細書の記載が重要であり、特に実施例の記載が重要であるといえます。実施例の記載は、クレーム文言とは区別できる特定の具体例を用いて記述すべきであり、クレーム用語の外延を定義するものであってはなりません。
 もし、特定の具体例が乏しいような記述である場合には、クレームと実施例とは同様な範囲を有するものと見られてしまう可能性があり、裁判所は明細書における限定をクレームに持ち込む可能性があります。一方、特定の具体例が多数ある場合、特にクレームの用語や構成要素に対応する具体例が豊富である場合には、裁判所は明細書の限定をクレームに持ち込む可能性が低くなるといえるでしょう。

判決書全文は以下のURLからダウンロード可能です。
本欄の担当
弁理士 大貫進介
弁理士 吉田千秋
弁理士 伊東忠重
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