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外国の判決・IP情報速報

米国CAFC判決 MEMC v. Mitsubishi Materials Silicon Corp事件

   電子メイル通信等による米国への情報提供及び技術支援(日本国内行為)が米国特許権の侵害の誘導に相当する可能性を判示した米国CAFC判決が2005年8月22日に出されました。

事案の概要:

・日本の会社である被告が、原告の米国特許権を侵害する製品(半導体ウエファ)を日本国内で製造し、訴外日本S社に販売した。日本S社が、そのウエファを訴外米国S社へと輸出販売した。
・被告は、当該米国特許権の存在を認識し、かつ米国S社による潜在的直接侵害行為を認識していた。
・電子メイルの証拠によれば、被告は、米国S社に対して技術的サポートを提供し、米国S社との間でウエファの出荷日程及び各出荷数量につき取り決め、ウエファに関する米国S社の問題点に対処するため製造プロセスを調整したことが明らかである。

主要な争点:

被告の上記行為は、侵害の誘導(35USC271(b))に相当するか否か。

主要なCAFC判示:

・被告のウエファ販売行為は米国外でなされたため当該特許権の直接侵害(35USC271(a))には当たらない。
・米国S社との間の出荷日程・出荷数量調整行為、技術支援行為及び製造調整行為は、侵害の誘導(35USC271(b))の有無を判断するに際しての侵害の助長に相当する可能性があると判示して、事件を地裁へ差し戻した。

判決全文は、以下のURLから入手可能です。
MEMC Electronic Materials, Inc. v. Mitsubishi Materials Silicon Corp. 04-1396

弊所コメント:

・直接または間接的に米国へ輸出する製品が米国特許権侵害の疑義がある場合において、当該製品の販売促進のため製品に関する情報を米国輸入会社へ提供する際には、その情報の内容に十分留意する必要があると思われます。
・本事件は地裁へ差し戻されたため、今後の判決が注目されるところです。
・仮に、被告行為が侵害の誘導であるとの判断が米国において確定した場合に、その被告である日本の会社に対して日本においてどのような民事上の救済を求めることができるのかという問題が残ります。
 この問題については、「特許権に基づく差止め及び廃棄請求の準拠法は登録された国の法律(米国特許法)であると解すべきである。米国特許権に基づき我が国における行為の差止め等を認めることは、我が国の採る属地主義の原則に反する。従って、我が国において差止め又は廃棄を命ずることは、法例33条にいう我が国の公の秩序に反するものである。」と判示し、さらに「損害賠償請求については、米国特許法271条(b)項のように特許権の効力を自国の領域外における積極的誘導行為に及ぼすことを可能とする規定を持たない我が国の法律の下においては、不法行為の成立要件を具備するものと解することはできない。したがって、米国特許権の侵害という事実は、法例11条2項にいう『日本の法律に依れば不法ならざるとき』に当たる。」と判示し差止め等請求及び損害賠償請求をともに認めなかった平成14年9月26日最高裁判決(FM信号復調装置事件)が参考になるでしょう。

本欄の担当
弁理士 大貫進介
弁理士 吉田千秋
弁理士 伊東忠重
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