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特許適格性に関する暫定的審査ガイドラインを公表 米国特許商標庁

 去る12月16日、米国特許商標庁は、Alice最高裁判決後の米国特許法101条に基づく特許適格性の審査における暫定的ガイドラインを公表しました。以下にその概要を紹介します。

 今回の暫定ガイドラインは、Alice最高裁判決の特許適格性判断の2つのステップを再度明確にしている。

ステップ1:明細書全体の開示を検討し、最も広く合理的な解釈によりクレーム解釈を行うことにより出願人の発明を特定し、その発明がプロセス、機械、製造物、化合物のいずれに該当するのかを判断する。

ステップ2A:発明がプロセス、機械、製造物、化合物のいずれかに該当する場合、クレームが自然法則、自然現象或いは抽象概念(以下、「法的に認められた例外」)に該当するか判断する。

ステップ2B:クレームが法的に認められた例外に該当する場合、クレームの構成要素単独、また組合せを考慮して、自然法則、自然現象或いは抽象概念より“significantly more”であると見做すことができるかを判断する(尚、訴訟における“significantly more”の判断では、“inventive concept”の有無を判断することがある)。

“significantly more”として十分なクレーム中の限定として以下の1)-6)を例示している:

1)他の技術や技術分野への改良;
2)コンピュータ自身の機能の改善;
3)自然法則、自然現象或いは抽象概念(法的に認められた例外)の特定の機械への応用;
4)特定の物の異なる状態や物への変換;
5)その分野で公知であり且つ従前通りである限定以外の特定の限定を加える、或いは、従来にはないステップを加え、クレームを特定の応用に限定する;
6)特定の技術環境に自然法則、自然現象或いは抽象概念(法的に認められた例外)の使用を一般的に関連付けることを超えた意義のある限定

尚、今回の暫定ガイドラインでは、過去のガイドラインと比して以下の点で異なる:

1)自然法則、自然現象或いは抽象概念(法的に認められた例外)に該当する全てのクレーム (製品及び方法)は、同様に上記ステップによって審査される。
2)自然物から成る製造物を含むクレームは、自然物(法的に認められた例外)を記載しているかを判断するためにステップ2Aにおいて検討される。この検討の際には、クレーム中の自然物から成る製造物と自然において生成される同等の物質を比較し、構造、機能、性質に基づく、著しく異なる特性を特定する。この点に関して、過去のガイダンスにおいては、著しく異なる特性を証明する為には構造における変更を示すことで十分である、とだけ記載されていた。
また、クレームが、法的に認められた例外に該当する(つまり、著しく異なる特性が示されなかった)場合にのみステップ2Bへと進む。
3)上記ステップ1-2A及び2Bの分析は、単に法的に認められた例外に関連しているクレームではなく、実際に法的に認められた例外を対象としている(記載している)クレームに基づき行われる。例として、単に自然物から成る製品の使用を記載した方法クレームは、必ずしも「著しく異なる特性」の分析の対象とはならない。

 本判決では、上記クレーム1の“program recognition device” 及び “program loading device”において“means”と記載しなかった為、上記「ミーンズプラスファンクションクレームを適用しない」との推定が働く、との見解を示した。
 しかし、本判決では、上記クレーム文言“program recognition device” 及び“program loading device”は特定の構成に対応せず、機能を実行する一般的なカテゴリを言及しただけである為、ミーンズプラスファンクションクレームの解釈の適用を受ける、との見解を示した。上記見解を示す根拠として、上記クレーム文言“program recognition device” 及び “program loading device”に対応する構成が一つも明細書に開示されていないこと、また明細書はそれらの機能を記載しているに過ぎないことを挙げた。更に、上記の機能は如何なるハードウェア或いはソフトウェア或いはその両方によっても実行可能である、との見解を示した。
 ROBERT BOSCH社は、ミーンズプラスファンクションクレームの解釈の適用を避けるべく、 “modernizing device”の記載がミーンズプラスファンクションクレームの解釈の適用を受けなかったInventio判決(469 F.3d at 1357-59)を引用したが、Inventio判決の“modernizing device”は、明細書及び図面中に“elevator control” 及び “ computing unit”と接続されていることが示されているだけでなく、プロセッサ、信号発生部、変換部、記憶部、信号受信部等の“modernizing device”の内部構成要素に関しても示されていたとして、上記BOSCH社の主張を退けた。

 本ガイドラインは、「単なる人類の介入“mere human intervention”」が特許適格性を与えるに十分であるとしているMPEP Section 2105を変更するものであることを示唆している。また、本ガイダンスは、法的に認められた例外をクレーム中に記載している箇所を指摘することにより法的に認められた例外を特定し、なぜ法的に認められた例外に該当するかを審査官が説明すべきである、と述べており、クレームが追加の構成要素を持つ場合、拒絶理由の中でその追加の構成要素を指摘した上で、その追加の構成要素が“significantly more”に値しない理由を説明すべきである、としている。

 

本件記載のガイドラインは以下のサイトから入手可能です。

以上

本欄の担当
副所長 弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC 米国特許弁護士 Herman Paris
同 米国パテントエージェント 有馬 佑輔
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