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「方法クレームには米国特許法271条(f)は適用されない」 米国CAFC

■2009年08月19日 Cardiac社 対St. Jude社事件判決

 2009年8月19日、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、Cardiac Pacemakers(Cardiac)社対St. Jude Medical(St. Jude)社事件において「方法クレームには、米国特許法271条(f)*は適用されない」旨の注目すべき判決を下した。

1.事件の経緯
 本件訴訟の対象となっていた特許発明(US 4,407,288のClaim 4)は、体内に埋め込み可能な心臓刺激装置を用いた心臓刺激方法に関するものであり、「①心臓の状態を判断する、②適切な治療法として心臓刺激装置の作動モードを選択する、③心臓の処置のため、その作動モードを実行する」という3つの工程から構成されている。 
権利者(原告)であるCardiac社は、被告であるSt. Jude社が米国国外に提供・販売した心臓刺激装置も、侵害品にあたる旨を主張した。地裁では、原告の主張が認められたが、被告側はこれを不服としてCAFCに控訴していた。 

* 米国特許法271条(f)
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/s_sonota/fips/mokuji.htmから抜粋) 
(f)(1) 何人かが権限を有することなく、特許発明の構成部分の全部又は要部を、当該構成部分がその全部又は一部において組み立てられていない状態において、当該構成部分をその組立が合衆国内において行われたときは特許侵害となるような方法により合衆国外で組み立てることを積極的に教唆するような態様で、合衆国において又は合衆国から供給した又は供給させたときは、当該人は、侵害者としての責めを負わなければならない。 
(2) 何人かが権限を有することなく、特許発明の構成部分であって、その発明に関して使用するために特に作成され又は特に改造されたものであり、かつ、一般的市販品又は基本的には侵害しない使用に適した取引商品でないものを、当該構成部分がその全部又は一部において組み立てられていない状態において、当該構成部分がそのように作成され又は改造されていることを知りながら、かつ、当該構成部分をその組立が合衆国内において行われたときは特許侵害となるような方法により合衆国外で組み立てられることを意図して、合衆国において又は合衆国から供給した又は供給させたときは、当該人は、侵害者としての責めを負わなければならない。 

2.米国連邦最高裁判所の考え
 2006年のUnion Carbide事件において、CAFCは、米国特許法271条(f)は方法クレームにも適用される旨の判決を下した。 
 しかしながら、2007年、米国連邦最高裁判所は、AT&T社対Microsoft社の訴訟(MS社製のソフトウエアマスターディスクを米国から海外に供給し、海外で当該マスターディスクを複製してコンピュータに組み込むことが、コンピュータソフトウエアに関連するAT&T社の米国特許権の侵害を構成するか否かが争点)において、「海外での行為は米国特許の対象外であるというのが大原則であり、例外的に海外で組み立てられる部品の米国からの輸出行為について規定した米国特許法271条(f)は、海外で複製したものまで含むとは拡張解釈できない」として、特許権侵害を否定する判決を下した。 

3.今回のCAFA判決
 今回のCardiac Pacemakers(Cardiac)社対St. Jude Medical(St. Jude)社事件において、CAFCは、上述のAT&T最高裁判決を適用して、「特許法271(f)条で言及されている「構成部分(components)」は、方法クレームの工程(step)を意味するものの、特許法271条(f)は、米国国外に「提供(supply)」された構成部分を要件としており、無形の構成部分、即ち、工程(step)はこれに該当せず、よって、方法クレームは、特許法271条(f)から除外される」旨を示した。 

本件判決文は、以下のサイトで入手可能です。
本欄の担当
弁理士 伊東忠重
米国特許弁護士 マーチン ウィークス
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