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国際協力

日本・中国間で特許審査ハイウェイを開始

 10月18日北京において、中国国家知識産権局局長と日本国特許庁長官は、日中間の特許審査ハイウェイ(Patent Prosecution Highway: PPH)の試行を本年11月1日から開始することに合意いたしました。
 この制度のしくみと利用する際の留意点を簡単に紹介いたします。

Ⅰ.施行日

 2011年11月1日

Ⅱ.特許審査ハイウェイの概要

 特許審査ハイウェイでは、日本特許出願のある請求項が日本国特許庁により特許可能であるとの判断がなされた場合、又は、国際出願のある請求項が国際調査機関又は国際予備審査機関として機能する日本国特許庁により特許性有りとの判断がなされた場合、対応する中国特許出願について審査を早期に行うよう、特許出願人が中国国家知識産権局に対して申請できる制度です。これまで、中国では早期審査の対象となる特許出願は国益や公益に資するものに限られていましたが、今回の特許審査ハイウェイの導入により、日本企業の中国における特許権の早期権利化が容易となります。

1.中国特許出願に対して特許審査ハイウェイを申請するためには、次の(a)~(g)の7つの要件すべてが必要とされます。
(a)当該中国特許出願が、日本出願又は国際出願と対応関係にある(対応関係の詳細につきましては日本国特許庁の下記リンク先をご参照下さい)。
(b)当該中国特許出願と対応関係にある日本出願又は国際出願が、特許可能又は特許性有りと判断された請求項を有する。
(c)当該中国特許出願の全ての請求項が、特許可能又は特許性有りと判断された請求項と十分に対応しているか、又は十分に対応するように補正されている。
(d)当該中国特許出願が公開されている。
(e)当該中国特許出願が実体審査段階に移行している。
(f)当該中国特許出願に関し、審査の着手がされていない。
(g)PPH申請が2012年3月1日以降の場合、当該中国特許出願が電子特許出願である。

2.提出書類
 以下の(a)~(d)の書類を添付した「特許審査ハイウェイ試行プログラムへの参加の申請フォーム」を提出する。
(a)対応する日本出願に対して日本国特許庁から出された(日本国特許庁における特許性の実体審査に関連する)すべてのオフィスアクションの写し、及びその翻訳文(中国語又は英語)。
(b)対応する日本出願の特許可能と判断されたすべての請求項の写し、及びその翻訳文(中国語又は英語)。
(c)日本国特許庁の審査官が引用した引用文献(除参考文献)の写し。ただし、特許文献の提出を省略できます。非特許文献は提出する必要があります。引用文献の翻訳は必要とされません。
(d)請求項対応表

対応表の例:

image

Ⅲ.日中特許審査ハイウェイの留意点

1.要件(d)について
 中国では、出願公開が運用上の実体審査着手の要件となっている点で日本とは異なっています。
 上記要件(d)によると、PPHを申請するにあたり中国出願が出願公開されていることが要件となっているので、中国特許制度の早期公開を利用することをお勧めします。

2.要件(e)について
 要件(e)を満たすべく、PPHの申請は、以下のタイミングのいずれかに行うことが必要とされます。
 ・SIPOから当該出願の「実体審査移行の通知」を受領した後
 ・審査請求と同時

3.要件(c)について
 中国特許出願の全ての請求項が、日本で特許可能又は特許性有りと判断された請求項と十分に対応していない場合には、要件(c)を満たすべく、自発補正を行うことが必要です。中国では、審査請求時、又は実体審査移行の通知の受領から3か月以内に限り、自発補正をすることができます。
 従って、早期公開を申請した上で、自発補正可能な期間においてPPHを申請し、要件(c)を満たすように補正することが通常であると思われます。

特許審査ハイウェイ申請の要件及び提出書類の詳細につきましては、下記リンクをご参考下さい。

本件に関し、ご不明な点やご質問等ございましたらお問い合わせくださいますよう御願い致します。

本欄の担当
副所長弁理士 吉田千秋
中国弁理士 張 小珣
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