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米国特許商標庁 (USPTO ) がPCT Informed Examination Request Pilot Programの開始を発表
米国特許商標庁(以下、USPTO)は新たな試行プログラムである「PCT Informed Examination Request Pilot Program」(以下、PIER Pilot Program)を発表しました。主な概要は以下のとおりでございます。
- 制度の概要
PIER Pilot Programは、PCT国際段階で既に作成されている国際調査報告・見解書を踏まえ、米国国内段階に入った特許出願について、本当に審査を希望するかを出願人に再確認することにより、審査着手前の案件在庫を減らし、審査の効率と質を改善することを目的としております。
なお、全てのPCT米国移行出願が対象となるのではなく、一定の出願をUSPTOが選定する、と発表されております。
このプログラムは官報掲載日(2026年4月9日)から12か月間(1年間)にわたって対象案件が選定される予定です。
- 対象案件
対象となる出願は、PCT出願から35 U.S.C. 371により米国国内段階へ移行した未審査案件です。
そのため、通常の米国出願(35 U.S.C. 111(a))、意匠出願、植物特許出願、再発行出願は対象外です。
また、本制度への参加・不参加はUSPTOが選定し、出願人側から参加希望や除外申請をすることはできません。
- USPTOが参照する国際段階の資料
・国際調査報告(International Search Report)
・国際調査機関の見解書
・国際予備審査請求を行った場合、国際予備報告(IPRP Chapter II)
・必要に応じ、Supplemental International Search 等
国際段階ですでに開示されている特許性評価を踏まえ、米国での審査を進める意思があるかを出願人に選択してもらう制度です。
- PIER Pilot Programに選定された場合の対応
選定された出願には、USPTOから「Requirement for Information」通知書が発行されます。出願人は所定フォーム(PTO/SB/478)により、以下の3つのうち1つを選んで応答する必要があります。
1) 審査を進める → 通常どおり審査へ進む(予備補正書の提出も可能)
2) 審査を12か月遅らせる → 追加費用なしで審査開始を遅らせることができる。
※出願人に権利化価値を再検討させることが目的です。
※12か月の遅延期間は「USPTOが遅延請求を受領した日」から起算されます。
※一度遅延が承認されると、出願人は途中で遅延期間を終了させて早期に審査を再開することはできません。
3) 明示的に放棄する
※本通知はOffice Actionとして扱われるため、ここで放棄を選択しても、調査費用や超過クレーム費用の返還は受けられません。
- 期限管理
応答期間は原則2か月であり、追加で4か月延長可能です。また、期限内に応答しない場合、出願は放棄扱いとなります。
- PTA(特許期間調整)への影響
12か月の審査遅延を選択した場合、その期間は applicant delay(出願人に起因する遅延) として扱われます。そのため、出願人にとっては、PTAの計算上不利になります。
- IDSとの関係
本通知書への応答後の審査において、PCT国際段階で引用された文献は、審査官が一定範囲で参照します。他方、当該文献を特許証表紙へ反映させたい場合には、別途IDSとして提出する必要があります。これはPCT移行案件における標準的なIDSの取り扱いルールと同一です。
- まとめ
PIER Pilot Programは、「PCT段階の評価を踏まえたうえで、米国で審査を本当に進める案件だけを選別させる」ことを目的とするプログラムです。選定された場合は、期限管理、社内意思決定、必要に応じた 予備補正書(preliminary amendment) の準備が重要になります。
<参照リンク>
PIER Pilot Programの詳細は、以下のリンクでご覧いただくことができます。
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITOH
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当: 弊所米国オフィスIPUSA PLLC
米国特許弁護士 Herman Paris
米国特許弁護士 有馬 佑輔
日本国弁理士 菊池 陽