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ブラジル制度改正情報 2024年1月

ブラジル法制度に大きな動きがございましたので、その主な内容についてご案内申し上げます。

  

1.実体審査開始 基準日変更

これまで、ブラジルにおける実体審査は出願日の古い順から行われてきました。

202411日より、実体審査進行の効率化を目的に、審査請求がなされた順から実体審査が行われるようになりました。

 

例1:

 

出願日

審査請求日

出願A

2022/01/10

2024/01/10

出願B

2023/02/10

2024/01/02

 

 

例2:

 

出願日

審査請求日

出願A

2022/01/10

2023/10/01

出願B

2023/02/10

2023/02/10

 

・例1、2ともに、旧制度では、出願A(青字ご参照)の方が先に実体審査開始となっておりましたが、新制度では、出願B(赤字ご参照)の方が先に実体審査開始となります。

・新制度には遡及効があります。例2のように、新制度施行日(202411)より前に審査請求されていた案件についても適用されます。

・通信/製薬分野は、ブラジル特許庁のバックログが膨大であるため、早期に審査請求しても、他の出願と比較して相対的には審査が早まりますが、絶対的には審査開始までにかなりの時間がかかります。したがいまして、早期に審査請求すると共にPPH等の審査促進オプションを併用されることをお勧め致します。

・「審査請求後の自発補正は不可」という点は変更ございません。ご留意くださいますようお願い申し上げます。

  

2.年金制度変更

(1)通常納付期間の拡張

従来、ブラジル特許の維持年金は、3ヶ月の通常納付期間がございましたが、制度変更に伴い、202411日より、通常納付期間が6ヶ月へ拡張されました。

 

例:国際出願日(年金起算日):2018/02/01

6年度(旧制度下で納付):2023/02/012023/05/01 の3ヶ月が通常納付期間

7年度(新制度下で納付):2023/11/012024/05/01 の6ヶ月が通常納付期間

 

新制度は、全案件(係属中、登録済)に適用されます。

 

(2)未納通知を待たずに回復請求

新制度の下では、未納通知を待たずに権利回復の庁費用納付(BRL 440USD 95)が可能となります。従来通り未納通知発行後、応答期限3ヶ月以内に権利回復の庁費用納付をすることも可能です。

 

(3)全年度一括納付

新制度の下では、権利存続期間中に発生する全年度の年金を一括納付することが可能となりました。一括納付に伴う庁費用減額制度はございません。

 

3.審判段階における補正の制限

従来、審判請求とともに補正書の提出が可能でしたが、制度変更により、審判請求時/審判段階での補正書提出は不可となります。審判官は、第一審で提出された補正書等を参照し、第一審審査官の判断の是非を審査するのみです。

 

この制度変更は、ブラジルの弁護士・弁理士から大きな反感を買い、ブラジルの知的財産協会は見直しを求めてブラジル特許庁を説得しようとしています。運用開始日が202442日に延期されましたが、この延期は大勢に影響を与えないようです。

 202442日以降に審判請求:新制度適用

202442日より前に審判請求(審判係属):新制度適用。既に審判請求した出願および今後審判請求する出願において補正書が提出されている場合、自発的にまたは庁指令に応答して、自発補正を取り下げると共に審判理由説明書を修正する必要がある。

  20244月にブラジル特許庁から再度発表があると思われます。当所でも注視して参ります。

   

.その他(パブリックコメント段階)

パブリックコメント段階ではございますが、

・審査請求期限の短縮(出願日から36ヶ月→出願日から6ヶ月)

・自発補正時期の拡張(審査請求前まで→最初のOA発送まで)

等につきましても議論がなされているようです。これら2点につきまして制度改正への動きはまだございませんが、今後の動向に注目して参ります。

本欄の担当
伊東国際特許事務所
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当:弁理士 野崎 圭子

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