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AI(人工知能) に関する韓国知的財産動向

近年、生成AIをはじめとする人工知能(AI)技術の急速な発展に伴い、知的財産分野においても発明者性、特許要件及び審査実務に関する様々な課題が提起されています。また、各国知的財産庁においても、AI時代に対応した制度整備や審査基準の見直しが進められています。

 

そこで、本稿では、韓国における最近のAI関連知的財産動向及び韓国特許庁が公表した「AI時代における適正な特許出願ガイドライン」の主な内容についてご紹介いたします。

 

1.AI時代における知的財産動向

2026年6月12日に東京で開催された「第19回IP5知的財産庁長官会合」において、韓国特許庁および日本国特許庁を含むIP5各庁と産業界は、AI時代における知的財産制度の発展方向および国際協力の在り方について議論しました。各庁は、AI活用の効率性と信頼性を高める一方で、最終的な判断は人間が行うべきであるという「Human-in-the-Loop(HITL)」の原則に共感し、AIに関する知的財産上の課題について国際的な連携を継続的に強化していくことを確認しました。

また、2026年6月15日に韓国・ソウルで開催された「第21回日韓商標専門家会合」では、商標審査分野におけるAI活用の現状および今後の発展方向について議論が行われるなど、特許分野にとどまらず商標分野においてもAI活用および国際協力が拡大しています。

このような国際的な議論と協力の流れに歩調を合わせる形で、韓国特許庁はAI活用発明に関する特許出願基準および留意事項をまとめた「AI時代における適正な特許出願ガイドライン」を公表しました。

 

2.「AI時代における適正な特許出願ガイドライン」の公表

1)趣旨

韓国特許庁は、2026年6月9日、「AI時代における適正な特許出願ガイドライン」を公表し、AIを活用した発明に関する特許出願時の留意事項および主要な特許要件に関する基準を提示しました。

 

2)発明者として認められるためには人間による実質的な貢献が必要

現行の韓国特許法上、AIは発明者として認められず、発明者として認定されるためには人間が発明創作の過程に実質的に関与している必要があります。

そのため、生成AIに一般的な指示を入力し、その生成結果をそのまま出願した場合には、正当な発明者として認められません。

実務上、発明者の貢献度が問題となる場合には、研究開発ノートや発明者確認書など、人間による創作的貢献を立証する資料の提出が求められることがあります。また、この点を看過したまま登録された場合には、特許が無効となる可能性があります。

 

3)AI生成結果に対する検証責任の強化

生成AIは、いわゆるハルシネーション(Hallucination)により、実際には存在しない技術内容や虚偽の効果を生成する可能性があります。そのため、出願人および代理人は、AIを利用して明細書などを作成する際、技術内容の真実性および発明の実施可能性について十分に検証する必要があります。

特に、医薬・バイオ・先端素材分野において、AIが提案した候補物質やその効果を実験的に検証しないまま出願した場合、実施可能要件の欠如などを理由として特許が拒絶される可能性があり、登録後であっても無効理由となり得ます。

更に、AIが生成した試験結果を実際の実験結果であるかのように提出して特許を取得した場合には、特許無効となるだけでなく、韓国特許法上の不正行為に対する刑事責任が問われる可能性があります。

 

4)AI発明類型ごとの特許要件の提示

韓国特許庁は、AI関連発明を①AI自体に関する発明、②AIを発明の構成要素として含む発明、③AIを研究開発ツールとして活用した発明の3類型に分類し、それぞれについて留意すべき特許要件を示しました。

まず、AI自体に関する発明は、新たなAIモデルやアルゴリズムなどAI技術そのものを対象とする発明であり、単なる数学的アルゴリズムではなく、具体的な情報処理を実現する技術として構成される必要があります。

次に、AIを発明の構成要素として含む発明については、単なる業務の自動化ではなく、従来技術と差別化される技術的特徴および効果が認められる必要があります。

最後に、AIを研究開発ツールとして活用した発明については、AIが導き出した結果をそのまま利用するのではなく、その技術的妥当性および実現可能性を十分に検証したうえで特許出願に反映する必要があります。

 

3.今後の展望

AI技術の発展と活用拡大に伴い、韓国特許庁もAI時代に適した特許制度の整備に向けて、関連制度や審査基準の見直しを継続しています。今回のガイドラインは、その取り組みの一環として策定されたものであり、AI活用発明に関する基本的な考え方を示すとともに、今後の特許制度の方向性を示した点で意義があるといえます。

 

 

<参考リンク>

AI時代における適正な特許出願ガイドライン(韓国語)

https://www.kipo.go.kr/ko/kpoBultnDetail.do?menuCd=SCD0200618&ntatcSeq=20927&sysCd=SCD02&aprchId=BUT0000029

 

本欄の担当
弁理士法人ITOH
所長・弁理士 伊東 忠重
副所長・弁理士 吉田 千秋
担当:韓国弁理士 金 世永