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韓国 商標審査関連改正規定の施行

韓国知識財産処(MOIP)は、商標審査の迅速性および公正性を高めるため、改正された「商標審査事務取扱規程」などを2026年7月1日から施行しました。今回の改正の主な内容は、以下のとおりです。

 

1、商標審査の決裁段階の簡素化

商標審査をより効率的かつ迅速に行うため、一定の経験を有する審査官については、重要度及び難易度が比較的低い案件に関し、自ら審査判断を行える運用となりました。従来は、事案の重要度などにかかわらず、課長またはチーム長などへの報告を経る必要がありました。

審査官が自ら判断できる案件の具体的な基準は公表されておらず、審査局内部の運用によるものと考えられますが、例えば、明らかに登録要件を満たす案件、補正により拒絶理由が明確に解消される案件、指定商品・指定役務に関する判断や引用商標との類否判断が比較的容易な案件などが該当するものと考えられます。

 

2、部分拒絶制度の効率的な運用

2023年に導入された部分拒絶制度をより効率的に運用するため、先願商標との関係で後願商標の審査を保留する場合について、その保留理由が解消される時点が明確化されました。

部分拒絶制度とは、指定商品・指定役務のうち拒絶理由があるもののみを拒絶し、拒絶理由がない残りの指定商品・指定役務については登録を認める制度です。この制度の下では、先願商標の審査結果により、後願商標の一部の指定商品・指定役務の登録可否が左右される場合があり、従来はその保留理由がいつ解消されたものと取り扱うかが明確ではなかったため、後願商標の審査が長期間保留されることがありました※[1]

本改正では、保留理由が解消される時点を「先願商標に係る拒絶決定が確定した日」と明確化したことにより、後願商標の審査が不必要に長期間保留されることを防ぎ、審査の迅速化が期待されています。

 

3、拒絶決定予告通知の簡素化

韓国では、拒絶理由通知への応答後も一部の指定商品・指定役務について拒絶理由が残る場合、拒絶決定に先立ち拒絶決定予告通知を発送します。この場合、出願人は補正書を提出することはできますが、意見書を提出することはできません。

従来は、出願人が拒絶理由通知に対して意見書の提出等の応答を行わなかった場合でも、改めて拒絶決定予告通知を発送した上で拒絶決定が行われていました。

改正後は、このような重複した拒絶決定予告通知手続を省略できるようにしました。これにより、拒絶理由が残る指定商品・指定役務については、より迅速に拒絶決定が行われる一方、拒絶理由のない指定商品・指定役務については、より早期に登録が可能になることが期待されます。

 

4、取消差戻し出願の審査官指定方式の変更

審査の公正性を強化するため、特許審判院(日本の特許庁審判部に相当)から取消差戻しされた出願について、審査官の指定方式が変更されます。

従来は、拒絶決定を行った審査官が、当該出願の取消差戻し後も再度審査を担当することができました。今後は、審判および訴訟手続における「前審関与制限」(一度判断した者が同じ事件を再度判断すると先入観が入りやすいため、公正・中立な審理を確保する目的で、その関与を制限する制度)の趣旨を審査段階にも反映し、従前に拒絶決定を行った審査官を除外した上で、新たな審査官が審査を担当することになります。

これは、同一の審査官が再度審査を行うことにより、先入観が介在し得るとの懸念を軽減するための措置であり、商標審査の公正性を高める効果が期待されます。なお、特許・実用新案分野においても、取消差戻しされた出願については、拒絶決定を行った審査官を除外するよう、同日に審査官指定方式が変更されます。

 

5、まとめ

 今回の改正は、商標審査の処理速度を高めるとともに、審査の公正性を強化することを目的とするものであり、出願人などが新たに講じるべき特別な対応は多くないものと考えられます。

もっとも、拒絶理由通知に対して応答しなかった場合、従来のように拒絶決定予告通知が改めて発送されることなく、直ちに拒絶決定が行われる可能性があります。そのため、出願人等においては、拒絶理由通知で指定された期間内に意見書または補正書を提出することが、これまで以上に重要になるものと考えられます。

また、審査手続の迅速化や、審査保留の解消時点の明確化により、出願人は商標権を取得できる時期をより予測しやすくなることが期待されます。これにより、商品・サービスの提供開始時期、ライセンス戦略その他の事業戦略を検討する上でも、より活用しやすい制度運用となるものと思われます。

 

今後も、各国制度や実務運用の最新動向を継続的に分析し、実務上重要と思われる情報を適宜ご案内して参ります。

[1] 本項目は、「部分拒絶制度」との関係において、後願商標の審査遅延を解消する方策の一つとしてご紹介しております。もっとも、後願商標の審査が遅延する要因は、部分拒絶制度の運用のみに起因するものではないことを、念のため申し添えます。

 

ご参考(韓国知識財産処Webサイト 韓国語)

https://www.moip.go.kr/ko/kpoBultnDetail.do?menuCd=SCD0200618&ntatcSeq=20963&sysCd=SCD02&aprchId=BUT0000029

本欄の担当
弁理士法人ITOH
所長 弁理士 伊東 忠重
商標部 弁理士 野崎 圭子
担当:韓国弁理士 金 世永