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海外ECサイトの模倣品対策 ― Amazon・Alibabaの商標権侵害申立制度と実務上の注意点 ―
越境EC(Electronic Commerce/電子商取引)の拡大に伴い、海外の大手ECモールにおいて、日本ブランドの模倣品が販売される被害が後を絶ちません。
各プラットフォームでは、商標権者等が権利侵害を申し立て、侵害商品の出品削除等を求めることができる制度(ノーティス・アンド・テイクダウン)が整備されています。しかし、どの国・地域で、どのような商標権を保有しているかによって、利用できる制度や対応方法が大きく異なります。 また、申立ての要件や手続きも、プラットフォームごとに異なります。本稿では、Amazon及びAlibabaグループが提供する権利侵害申立制度を整理し、日本企業の皆様が押さえておくべきポイントと、弊所によるサポート内容をご紹介致します。
1、背景 ― 数字で見るEC模倣品対策の現状
・Amazonは、2025年に世界で1,500万点超の模倣品を特定・押収・廃棄し、また2020年の模倣品犯罪対策チーム(Counterfeit Crimes Unit)発足以降、32,000以上の不正業者に対して訴訟・刑事告発を行ったと公表しています[1]。
・日本国内でも、令和3年商標法改正(第2条第7項)により、海外事業者が郵送等で模倣品を国内に持ち込ませる行為が「輸入」に含まれることが明確化され、2022年10月1日以降は個人使用目的でも海外事業者から送付される模倣品は輸入できなくなりました(関税法第69条の11)[2]。
プラットフォーム上の削除申立と、税関での水際対策の両輪で対応することが重要になっています。
2、Amazonの侵害申立制度
(1) 主なツールと利用条件
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ツール |
利用条件 |
特徴・留意点 |
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Report Infringement (公開通知フォーム) |
権利者またはその代理人であれば誰でも利用可能。ブランド登録は不要。 |
単発の申立て向け。ASIN(Amazon Standard Identification Number)・URL単位で侵害を特定して提出。[3] |
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ブランド登録 (Brand Registry) |
対応するAmazonストアがある国についてAmazonが指定する政府商標庁における、ブランド名又はロゴの有効な登録商標又は一定の出願中商標が必要。[4] |
ブランド・知財をAmazon上で管理する無料プログラム。検索・一括申立て等が可能。 |
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Report a Violation (RAV) |
ブランド登録済みで、「権利所有者」または「登録代理人」ロールを持つアカウント。 |
知財侵害等の報告ツール。出願中商標でブランド登録した場合、商標が登録されるまでRAVは使えません。2026年7月31日の更新で、知財侵害・ストアポリシー違反・規制遵守の報告が一つの画面に統合され、入力式フォームと「提出履歴」タブが導入されました。[5] |
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Project Zero |
Brand Registry登録済みで、対象Amazonストアに対応する有効な登録商標を有し、Amazon所定の利用適格要件を満たす必要あり。 |
模倣品の出品を自ら即時削除できるセルフサービス型。模倣品以外への使用は不可。利用資格を維持するためには、削除判断の高い正確性(Amazonは99%以上を基準として案内)を維持する必要があります。[6] |
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Transparency |
ブランド登録済みブランド。 |
商品ごとの固有コードで真贋を確認する仕組み。Project Zeroと併用で効果大。 |
(2) 実務上のポイント
- 国ごとの権利が必要:comで申し立てるなら米国、Amazon.co.jpなら日本の登録商標を備えることが基本です。日本の登録だけでは、海外マーケットプレイスでの対応力が大きく下がります。
- 出願中で「入口」だけ確保:ブランド登録は、対応するAmazonストアがある国について、Amazonが指定する政府商標庁における、一定の出願中商標又は登録商標で利用できる場合があります。RAVやProject Zeroの本格的な削除権限は権利化後となる点に注意が必要です。
- 申立ての撤回は権利者側からのみ:Amazonでは、誤申立てに対する出品者側の救済は権利者による撤回が基本となるため、申立てを受けた出品者から撤回要請が来ることがあります。真正品、並行輸入品その他侵害に該当しない商品を誤って申し立てないよう、申立て前の侵害判断を慎重に行うことが、紛争予防につながります。
- 「報告の受理」=「削除」ではない:RAVは報告窓口が統合されて使いやすくなりましたが、申立内容と資料は審査されます。削除後の再出品もあり得るため、申立て履歴・削除状況を台帳で継続管理することをお勧め致します。
3、Alibaba(IPPプラットフォーム)の侵害申立制度
(1) 制度の概要Alibabaグループは「知的財産保護プラットフォーム(IPP)」で申立てを一元受付しており、Taobao、Tmall、Tmall.hk、1688、Alibaba.com、AliExpress を対象としています。[7]東南アジアのLazadaも2019年6月からIPPで申立てを受け付けています。[8]
一方、AliExpress.ruはAliExpress.comとは運営主体が異なり、申立て窓口も別である旨がAlibabaグループFAQに明記されています。このように対象サイトと窓口は変わり得るため、申立て時に最新の案内を確認することが必要となります。
| 項目 | 内容(IPP 公式 FAQ・ポリシーより) |
|---|---|
| 対象となる権利 | 商標(同一・類似商標の無断使用、偽造標章)、著作権、特許等。商標の意図的なぼかし等の欺瞞的行為も対象です。[9] |
| 権利の地域性 | Taobao等の中国国内向けサイトは中国の登録権利が前提となります。Alibaba.com・AliExpress等の国際サイトは外国の権利でも受付可能です。 |
| 出願中の商標 | 出願受理通知書は権利証明として認められません。登録後に申請が必要です。 |
| 代理人による申立て | 権利者が署名・押印した授権書が必要。「正規販売店である」という販売許諾は申立ての授権としては認められない場合があります。 |
| 手続の流れ | ①アカウント登録・本人確認 → ②権利情報の登録・認証 → ③権利とURLを紐付けて申立て → ④出品者に通知され、反論(カウンターノーティス)の機会が与えられます。 |
| 対象外の申立て | 流通契約・販路管理、最低価格等の価格統制に関する紛争は対象外です。「無許可販売」だけでは侵害と判断されません。 |
| 悪意の申立て | 競合の妨害を目的とするなど悪意ある申立ては受け付けず、申立人に制裁を科すとされています。 |
(2) 中国法上の枠組み
中国の電子商務法は、権利者がプラットフォームに削除等の必要措置を求める権利(中華人民共和国電子商務法第42条)と、出品者による不侵害声明(反通知)が権利者に転送された後、15日以内に権利者が行政投訴または提訴しないと措置が解除される仕組み(同法第43条)を定めています。また、悪意による誤った通知には損害賠償の加重責任が規定されています(同法第42条第3項)。反通知を受けた場合に備え、短期間で現地手続に移行できる体制を準備しておくことが重要です。なお、実績のある権利者向けには申立ての優先処理や一定の場合の立証負担軽減等を受けられる「Good Faith」プログラムも設けられています。[10]
4、留意すべき10のポイント
- 販売国・模倣品流通国での商標登録:プラットフォーム申立ての前提は「その国の登録商標」です。特に中国は先願主義(中国商標法第31条)であり、第三者による冒認出願が典型的なリスクです。
- 出願中では足りない場面がある:Alibaba IPPでは出願中商標は権利証明になりません。Amazonでもツールの一部は権利化後でないと使えません。被害が出る前の早期出願・権利化が最大の対策です。
- 指定商品・区分と侵害品の整合:申立て対象商品が登録商標の指定商品と同一・類似でないと、申立ては却下されます。主要商品・周辺商品をカバーする指定商品を事前に検討しておくことをお勧め致します。
- 実際の使用商標と登録商標の一致:ブランド登録では、商品・パッケージ上の表示と登録商標の一致が求められます。ロゴ変更時は再出願の要否を確認する必要があります。
- 真正品・並行輸入品との区別:日本法上、一定の要件を満たす真正商品の並行輸入は商標権侵害に当たらないとされています(最判平成15年2月27日判決・フレッドペリー事件参照)。もっとも、並行輸入品の取扱いは国・地域により異なります。「無許可販売者の排除」目的の申立ては却下・紛争の原因になりますので慎重な判断が必要となります。
- 商標の使用態様の確認:「〇〇対応」「〇〇用交換部品」のように、適合機種・用途の説明として商標が表示されているにすぎない場合は、出所表示としての使用に当たらず、侵害とならない可能性があります(日本法では商標法第26条第1項第6号参照。各国で考え方は異なります)。
- 他の権利の活用:ロゴは付いていないが形状・デザインが酷似している、商品写真が無断転用されている、といった場合は、商標権ではなく意匠権・著作権に基づく申立ての方が適切なことがあります。Alibaba IPPも著作権・特許(意匠を含む)に基づく申立てを受け付けています。
- 誤申立てのリスク:根拠の乏しい申立ては、プラットフォームでの申立て権限の制限、中国電子商務法上の賠償責任(中華人民共和国電子商務法第42条第3項)、日本の不正競争防止法上の信用毀損行為(第2条第1項第21号)等の問題を生じ得ます。
- 証拠の確保:URL・日時が分かるスクリーンショット、テスト購入品、販売者情報を保全しておくと、反論への対応や訴訟・行政摘発への移行がスムーズです。
- アカウント・書類の期限管理:IPPでは権利の存続期間、授権書の有効期間、身分証明書類の期限切れにより認証が取り消されることがあります。更新管理を怠らないことが重要となります。
併せて、以下の資料を事前に整備しておくことをお勧め致します。
- 主要販売国・地域の商標登録一覧(登録番号、権利者名義、指定商品、存続期間、登録証の写し)
- 権利者とEC運営会社・現地代理店の関係を示す資料、申立て用の委任状・授権書
- 真正品の写真・包装・ラベル・型番と、模倣品の識別ポイントをまとめた資料
- 申立て履歴、削除・再掲載の状況、プラットフォームからの回答を記録する管理台帳
5、弊所がご支援できること
①権利ポートフォリオ診断・外国出願 販売国・製造国・流通国を踏まえ、必要な国・区分・指定商品を診断し、マドプロ出願や各国直接出願で権利化します。
②プラットフォーム登録・申立て代行Amazonブランド登録の手続支援、Alibaba IPPのアカウント登録・権利認証、侵害申立てについて、各制度の利用要件や案件内容に応じて手続を支援します。
③侵害判断とカウンターノーティス対応申立て前の侵害該当性(類否・真正品該当性)の検討、反論を受けた場合の再反論・現地手続(行政投訴・訴訟)への移行を現地代理人と連携して対応します。
④冒認商標への対策第三者による抜け駆け出願・登録への異議申立て、無効・取消請求を行います。
⑤国内水際対策税関への輸入差止申立て(関税法第69条の13)の書類作成を支援します。
⑥公的支援制度の活用ジェトロの「中小企業等海外侵害対策支援事業」では、侵害調査、警告、ウェブページの削除等の費用の2/3(上限500万円)が助成されます。[11]
弊所においても、今後の制度変更等の動向を注視し、必要に応じて追加情報をご案内いたします。
[1] Amazon News https://www.aboutamazon.com/news/policy-news-views/amazon-trustworthy-shopping-experience-report-2025
[2] 税関「模倣品の水際取締り強化!」https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/d_010/index.html
[3] Amazon「How to report an IP violation to Amazon」https://sell.amazon.com/blog/report-a-violation-to-amazon
公開通知フォーム https://www.amazon.com/report/infringement
[4] Amazon Brand Registry https://sell.amazon.com/brand-registry
[5] Amazon「Report a Violation: all reports in one place」https://sell.amazon.com/blog/announcements/report-a-violation
[6] Amazon「Project Zero」https://sell.amazon.com/brand-registry/project-zero
[7] Alibaba IPP FAQ https://ipp.alibabagroup.com/faq/en.htm
[8] Alizila「Lazada Leverages Alibaba’s IP Protection Platform」https://www.alizila.com/lazada-leverages-alibabas-ip-protection-platform-southeast-asia/
[9] Alibaba IPP Principle & Policy https://ipp.alibabagroup.com/policy/en.htm
[10] Alibaba Group「Good Faith Takedown」プログラムに関する発表 https://www.alibabagroup.com/en-US/document-1491550301713334272
[11] ジェトロ「中小企業等海外侵害対策支援事業」https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas.html 本事業は例年度実施されており、受付は概ね春から10月末頃までです(予算に達し次第終了)。次年度の公募情報は特許庁・ジェトロのウェブサイトでご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別案件に関する法的助言ではありません。各プラットフォームの規約・手続は随時変更されるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください(2026年10月時点の情報に基づく)。
- 本欄の担当
- 弁理士法人ITOH
所長 弁理士 伊東 忠重
商標部 弁理士 東 泰成
担当:弁理士 野崎 圭子