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中国特許審査指南の改正案

2022年10月31日に中国国家知識産権局(CNIPA)は、2021年6月1日に施行された改正中国特許法に合わせて、2020年11月10日公表の『特許審査指南改正草案(第2回意見募集案)』及び2021年8月3日公表の『特許審査指南改正草案(意見募集案)』をベースにして、『特許審査指南改正草案(再意見募集案)』を公表しました。

 今回の意見募集の内容は、主にこれまでの2回の意見募集の内容を反映させて整理したもので、特許法及び同法実施細則に関する規定を改正するものです。

今回意見募集がされていない部分(例えば、部分意匠に関する内容など)は、前回までの改正案に準じ、今回再意見募集がされた部分は、前回までの内容を上書きするものです。

意見募集の期限は2022年12月15日です。

 また、2022年10月28日に中国国家知識産権局により発表された今後の推進計画によりますと、『中華人民共和国特許法実施細則』、『特許審査指南』の改正は、2022年12月末までに完了する予定であるとのことです。

 今回の審査指南改正案(再意見募集案)のポイントは以下の通りです。

 

1.方式審査・予備審査の部の改正内容及び改正の説明(第1部)

 

(1)公開の準備に関する請求についての取扱い(第1部第1章第4.1.2節、第6.5節、第6.6節、第5部第5章第3.1.1節、第8章第1.2.1.1節)

 公開の準備の実情に応じ、公開する特許出願書類の印刷準備作業を完了する時期を、原則として、特許法第34条に規定する18ヵ月の前1ヵ月と明確化する。また、それに合わせて「15ヵ月が満了して公開の準備をし」という表現を削除し、例えば、発明者の氏名の非公開請求、早期公開の申立ての取下げ、特許出願の取下げ、秘密保持請求の提出などの公開の準備に関するその他の請求について改正する。

 

(2)担当者、代表者に関する改正(第1部第1章第4.1.4節、第4.1.5節)

 第1に、無資格で特許出願を代理する行為を規制するため、出願人が団体であって特許代理機関に委任しないときは、担当者がその団体の従業者である旨の証明資料を提出しなければならない旨規定する。第2に、電子出願による提出態様の実情に応じて、電子出願の提出者を代表者とみなす旨規定する。

 

(3)先の出願の出願書類を引用する方式による出願書類の補充に関する改正(第1部第1章第4.7節)

 細則改正草案に合わせて、先の出願の出願書類を引用する方式による出願書類の補充制度(以下「引用による補充」という。)について改正するものである。第1に、「脱落した特許請求の範囲又は明細書を先の出願の出願書類を引用する方式により補充する」ことと、「誤って提出された特許請求の範囲、明細書、又は欠落した若しくは誤って提出された特許請求の範囲、明細書の一部の内容を先の出願の出願書類を引用する方式により補充する」ことと、の2種類の場合について、それぞれ、引用による補充をする時期、引用による補充の申立て、補充書類等の審査について規定する。第2に、優先権主張の回復、優先権主張の追加又は訂正、分割出願に該当する場合には、引用による補充は適用せず、出願人が引用による補充に関する期間を徒過した場合は、現行細則第6条第2項に基づき回復を請求することはできない旨明らかにする。

 

(4)優先権主張の追加又は訂正に関する改正(第1部第1章第6.2.3節)

  細則改正草案に合わせて、優先権主張の追加又は訂正制度について改正するものである。第1に、優先権主張の追加又は訂正を請求する時期、提出すべき書類などについて規定する。第2に、優先権主張の回復に該当する場合、細則改正草案の該当条文の優先権主張の追加又は訂正についての規定は適用せず、出願人が細則改正草案の該当条文の優先権主張の追加又は訂正に関する期間を徒過した場合は、現行細則第6条第2項に基づき回復を請求することはできない旨明らかにする。

 

(5)優先権主張の回復に関する改正(第1部第1章第6.2.6節、第3部第1章第5.2.5節)

 細則改正草案に合わせて、優先権主張の回復制度について改正するものである。第1に、「6.2.6.2 特許法実施細則第36条に基づく回復」の節を新設し、優先権の回復の手続の取扱い及び審査の基準を明らかにする。第2に、優先権主張の追加又は訂正に該当する場合、優先権主張の回復についての規定は適用せず、出願人が「優先権主張の回復」に関する期間(第5.2.5.1節の国際出願について国内段階に移行して優先権を回復する場合を含む。)を徒過した場合は、細則第6条第1項、第2項に基づき回復を請求することはできない旨明らかにする。

 

(6)発明者の変更について(第1部第1章第6.7.2.3節)

 発明者の変更をする行為をよりよく規律するため、第6.7.2.3節で発明者の記載漏れ又は記載誤りにより変更の請求をする時期について明確化する。

 

(7)信義誠実の原則についての審査(第1部第1章第6.7.5節)

 第6.7.5節の信義誠実の原則に関する規定を新設し、法的手続の取扱いの段階で信義誠実の原則に反する場合について規制する。

 

(8)引用による補充により実用新案について出願書類を補充する場合についての審査基準(第1部第2章第7.6節)

 第1に、実用新案特許出願について先の出願の出願書類を引用する方式により出願書類を補充する場合の審査運用基準を明らかにする。第2に、先の出願の出願書類を引用する方式により明細書の図面を補充する場合の運用基準を明らかにする。

 

(9)特許出願が第5条第1項の法律に違反し、公益を害するものに関係する場合についての審査(第1部第3章第6.1.1節、第6.1.3節、第2部第1章第3.1.3節)

 2020年の意見募集案を基礎として、第1に、第6.1.1節に「中国の国旗、国章の内容を含む意匠」のような明らかに法律に違反する場合を追加する。それに合わせて、第6.1.3節第4段落を削除する。第2に、第6.1.3節に「政党の象徴及び標章」に関する内容を追加する。第2部第1章第3.1.3節も同様に相応の調整をする。

 

(10)意匠特許権を付与しない場合について(第1部第3章第7.4節)

 2021年の意見募集案を基礎として、第1に、誤解を避けるため、特定の構成製品が保護対象に該当するか否かという旧第4号の表現を復活させる。第2に、第10号の「相対的に分割可能な独立した領域」を「相対的に独立した領域」に改める。

 

(11)同じ製品の2つ以上の類似意匠について(第1部第3章第9.1節)

 同じ製品の全体意匠とその何らかの部分意匠とは、1件の出願として提出することができない旨明確化する。

 

2.実体審査の部の改正内容及び改正の説明(第2部)

 

(12)遺伝資源の定義について(第2部第1章第3.2節)

 細則改正草案に合わせて、遺伝資源の定義について改正するものである。遺伝資源に遺伝資源素材とこれらの素材を利用して生じた情報とが含まれることが明確化され、関連の審査例が示される。

 

(13)疾病の診断又は治療の方法に関する改正(第2部第1章第4.3.1.2節)

 コンピュータ等の情報処理能力を有する装置により実施される診断に関係する情報処理方法について、前記方法により得られる結果が「中間結果」であるか否かを判断するには主観性が大きいので、すべてのステップがコンピュータ等の装置により実施される情報処理方法であって、その直接の目的が診断結果又は健康状況を得るものでないものは、診断方法に該当しないことが明確化される。

 

(14)背景技術の引用についての改善(第2部第2章第2.2.3節)

 出願書類の背景技術に特許文献の出願番号を引用してよいことが明確化される。

 

(15)ヌクレオチド又はアミノ酸の配列表(第2部第10章第9.2.3節)

 国家知識産権局第485号公告に基づき、「国家知識産権局が公表する『ヌクレオチド及び/又はアミノ酸の配列表及び配列表の電子ファイルの基準』」を「国家知識産権局が定める」と調整する。

 

3.国内段階に移行した国際出願についての審査(第3部)

 

(16)国内段階に移行する手続の履践を誤った場合の救済について(第3部第1章第2.2.2節)

 出願人が細則改正草案に規定する期間内に十分な額の所定の手数料を納付したが、出願番号等の関係事項の記載誤りによって不適法とみなされた場合、国際出願が中国国内段階に移行することができない旨の通知書を受け取った日から1ヵ月以内に特許庁に訂正を請求することができる。

 

(17)選択図についての改正(第3部第1章第3.2.3節)

 細則改正草案に合わせて、選択図の提出方法の変更について改正するものである。「選択図を提出する」を「選択図を指定する」と改め、要約の字数に関する規定の引用についてもそれに合わせた改正をする。要約の翻訳文、選択図が不適法である場合の取扱いについて明確化する。

 

(18)審査の依拠とする書類についての改正(第3部第2章第3.2節)

 細則改正草案に合わせて、引用補充制度について改正するものである。出願人が中国についての出願日を訂正することで引用により補充する要素又は部分を残すことを認めない旨の表現を削除する。方式審査の段階で引用により補充する要素又は部分が既に受け入れられて、もとの国際出願日が維持されているものについては、実体審査の過程で、引用により補充する要素又は部分について確認することを要し、審査の結果、不適法であるときは、審査官は、国際出願の中国についての出願日を改めて決定しなければならない。

 

4.拒絶査定不服審判と無効審判の請求についての審査(第4部)

 

(19)合議審査、独任審査、回避制度と除斥事由について(第4部第1章第3.3節、第4節、第5節、第4部第3章第3.6節)

 第1に、口頭審理の手続を改善する。第2に、審査指南中の公民による代理に関する表現を調整し、『特許代理管理規則』第8条の規定と一致させる。当事者の近親者及び従業者は、当事者と特別な身分関係を有することにより、代理人として特許権無効審判事件に関する事務を取り扱うことが認められるべきである。近親者及び従業者の身分証明資料についても規定する。

 

(20)審決の公開について(第4部第1章第6.3節)

 当事者及び社会公衆の便宜のため、拒絶査定不服審判及び無効の請求の審決は、発送後速やかに国家知識産権局のウェブサイトで公開する。

 

(21)前置審査について(第4部第2章第3節、第2部第8章第8節)

 2021年の意見募集案を基礎として、第1に、前置審査がされる審査期間を削除して、紙の包袋が関係部門で回付されるという表現を調整する。第2に、機構の設置が調整された実情に応じて関連の表現を改め、「特許審判委員会」という表現を削除し、「原審査部門」を「審査部門」と改める。

 

(22)拒絶査定不服審判の手続、無効審判の手続の終結(第4部第2章第9節、第3節第8節)

 第9節第4段落、第8節第4~5段落を削除する。審決が下されて送達された後、当事者に対して当該拒絶査定不服審判又は無効審判の手続は、既に終結するものとする。当事者が審決について人民法院に出訴するか否かは、当事者による司法救済権の自由な行使であり、司法救済手続は、拒絶査定不服審判又は無効審判の手続を継続するものではないので、審査指南に規定する必要はない。

 

(23)当事者処分主義が適用される場合(第4部第3章第2.2節、第4章第5.3節、第4章第13節)

 無効審判の手続において、特許権者が出願日から特許権を放棄する旨を明示した場合において、社会公共の利益及び他人の適法な権利利益に反しないときは、特許権者が自己の特許権を処分して一部又は全部の請求項を放棄することは認められるべきである。無効審判の審決により権利の処分行為を確認する。

 

(24)無効審判請求の対象について(第4部第3節第3.1節)

 同じ特許権について全部又は一部の無効審決が既に下されている場合、当該無効にされた特許権について後にされた無効審判請求については、このときに、無効審判が請求された特許権が既に存在しないので、受理しないこととしなければならない。先に下された全部又は一部の無効審決が人民法院の効力を生じた判決により取り消されたときは、この後の無効審判請求は、改めてすることができる。

 

(25)無効審判の手続の中止について(第4部第3章第3.7節、第3.8節)

 2021年の意見募集案を基礎として、権利帰属紛争の当事者が無効審判の手続において意見を提出することができる旨の規定(第4部第3章第3.7節)と、その者に審査状態通知書を発送する旨の規定(第4部第3章第3.8節)と、を追加する。

 

(26)無効審判の手続における職権による審査について(第4部第3章第4.1節)

 第4.1節第1段落に「必要なときは、特許権に特許法及び同法実施細則の関係規定に明らかに違反するその他の事由があることについて審査することができる」と追加する。

 

(27)無効審判の手続における特許文献の訂正の原則について(第4部第3章第4.6節)

 無効審判請求における特許文献の訂正は、無効とされる理由又は合議体が指摘した不備についてのものでなければならない旨を明確化する。

 

(28)国際意匠出願に関する送達について(第4部第3章第7節)

 ハーグ協定への加入後、無効審判の手続において国外の主体への受理通知の送達という問題が存在するので、通常の特許とは異なるより多様で実行可能な送達方法を規定する必要がある。

 

(29)医薬品特許紛争の早期解決体制について(第4部第3章第9節を追加)

 医薬品特許紛争の早期解決体制を定着させるため、今回の改正では、審査指南第4章第3節に第9節「医薬品特許紛争の早期解決体制に係る無効事件の審査についての特則」を追加し、前文、請求書及び証明書類、審査の順序、審査の基礎、審査の状態及び事件終結の通知を含める予定である。

 

(30)口頭審理の通知及び記録について(第4部第4章第3節、第11節)

 審理の実務と発展、新しい技術的手段の活用を勘案し、関係司法解釈を参考にして、通知及び記録をする方法、手段について適宜調整をし、当事者の基本的な手続権に支障が及ばないようにする。

 

(31)口頭審理の進行について(第4部第4章第5.1節、第5.4節)

 審理する事実が明らかで、争点が明確で簡単な無効審判事件については、口頭審理の手続を改善して、口頭審理の前に十分な合議をし、合議体で一致して同意することで、主審官が合議体を代表して出席し、口頭審理を主宰することができることとする。

 

(32)外国語による証拠の提出について(第4部第8章第2.2.1節)

 審査の実際に沿うように、翻訳の依頼についての文章の表現を調整する。

 

5.特許出願及び事務処理について(第5部)

 

(33)特許出願をする手続の形式について(第5部第1章第2節)

 電子形式のファイルの効力について、紙形式で提出された特許出願書類及びその他の書類は、国家知識産権局により電子形式のファイルに変換されて電子システムのデータベースに記録されることで、もとの紙形式の書類と同等の効力を有する旨が明確化される。拒絶査定不服審判の手続において紙出願と電子出願の変換がされることも明らかにされる。

 

(34)先の出願を引用することにより補充する書類の受理手続について(第5部第3章第2.3.3節)

 先の出願を引用することにより補充する書類の受理手続を追加し、先の出願を引用する方式により書類を補充するものについては、出願人が最初に特許出願を提出する際に引用による補充の申立てをし、かつ、最初に特許出願をする際に優先権を主張していた場合において、特許庁が出願人に脱落書類補充通知書を発送し、出願人が期間内に確認した引用による補充の申立てを提出し、受理の要件に適合するとき、特許庁は、受理通知書を発送するが、しからざれば、不受理通知書を発送する。当該出願は、受理された後、通常の審査手続に移行するが、補充された書類が引用による補充についての規定に適合するか否かについては、その後の手続において審査し、確認する。

 

(35)外国への特許出願に関する秘密保持審査の期間について(第5部第5章第6.1.2節)

 細則改正草案の秘密保持審査制度に関する改正に基づき、第5部第5章第6.1.2節の秘密保持審査の期間についてそれに合わせた改正がされる。

 

(36)送達日の特定について(第5部第6章第2.3.1節)

 電子形式により送達される通知及び決定・査定については、当事者が認める電子システムに入った日を送達日とする旨規定する。当事者が認める電子システムに入った日と通知書及び決定・査定の発送日とが相違する場合は、出願人が証拠を提出することができる場合を除き、当該通知書及び決定・査定の発送日を送達日と推定する。

 

(37)国際意匠出願に関する応答期間について(第5部第7章第1.2節)

 国際意匠出願の出願人が拒絶の通報に応答する期間を4ヵ月と明らかにする。

 

(38)期間の計算について(第5部第7章第2.3節)

 細則改正草案の期間の計算に関する改正に基づき、期間の起算日についての表現が明確化される。

 

(39)中止する審査及び処理について(第5部第7章第7.3.1.2節、第7.5節)

 権利帰属紛争の当事者がする中止の申立てについて、特許庁は、事件の審理の進捗、事件の証拠状況に応じて、公益への配慮を反映し、信義誠実を強調して、虚偽訴訟を厳格に取り締まる原則、考え方に立って、中止するか否かを決定することができる。手続の中止が終了した後、関係特許権が既に全部無効にされていれば、このときは、権利帰属紛争の双方当事者に対し手続中止終了通知書を発送することを要しない。

 

(40)審査の繰延べについて(第5部第7章第8.3節)

 実用新案の審査繰延請求についての内容が追加される。意匠特許出願の審査を繰り延べる期間を出願人が月単位で柔軟に選択することが認められ、繰り延べる期間の最長は、審査繰延請求をして効力が生じた日から36ヵ月とされる。審査繰延請求を撤回する機会も出願人に与えられ、審査手続のさらなる改善が実現され、より柔軟で便利な審査体制が当事者に提供される。

 

(41)証書の交付方式について(第5部第9章第1.1.4節)

 『電子特許証及び特許電子出願の通知書の電子印章に関連する事項に関する公告』(国家知識産権局公告第349号)に基づき、それに合わせた改正がされる。

 

(42)印紙税について(第5部第9章第1.1.3節、第1.2.2節)

 印紙税は、実務上既に徴収が停止されているので、それに合わせて表現が改められる。

 

(43)特許証の引替交付及び誤りの訂正について(第5部第9章第1.2.3節、第1.2.4節)

 電子証書の普及により、それに合わせた改正がされる。

 

(44)特許権の付与に係る期間補償について(第5部第9章第2節)

 「特許法第42条第2項に基づく特許権の付与に係る期間補償」が追加される。「請求の提出」、「補償期間の決定」、「特許権の付与に係る期間補償の請求についての審査」、「登録及び公告」などの数点から規定する。

 

(45)医薬品の特許権に係る期間補償について(第5部第9章第3節)

 「特許法第42条第3項に基づく特許権の期間補償」が追加される。「補償の要件」、「請求の提出」、「証明資料」、「適用範囲」、「保護範囲に入るか否かの審査」、「補償期間の決定」、「医薬品の特許権に係る期間補償の請求についての審査」、「登録及び公告」などの数点から規定する。

 

(46)特許権の消滅について(第5部第9章第4.1節)

 特許法第42条の規定に基づき、それに合わせて第4.1節の意匠特許権の存続期間を改正し、特許権の付与に係る期間補償又は医薬品の特許権に係る期間補償がある特許の期間が終了する日の計算方法を例示する。

 

(47)特許権評価報告書について(第5部第10章第1節、第2.1節、第2.2節、第2.3節)

 2021年の意見募集案を基礎として、特許権評価報告書の作成を請求する際に被疑侵害者が提出すべき証明書類の種類を規定するとともに、特許権者から発送された弁護士の書簡、電子商取引プラットフォームの苦情通知書などを受け取った団体又は個人も被疑侵害者に該当すると規定し、これらの者が提出すべき証明書類の種類をそれに応じて規定する。

 

(48)特許の開放許諾について(第5部第11章)

 2021年の意見募集案を基礎として、第1に、「明らかに不合理な使用許諾料の基準について、特許庁は、関係証明書類の提出を当事者に求める権限を有する」を削除する。第2に、特許権者が開放実施許諾をするときに自発的に遵守すべき規範について明らかにし、既に開放許諾が実行されている特許権について、特許法実施細則第86条第1項に規定する開放許諾がされてはならない事由があるとき、特許権者は、開放許諾の申立てを自発的に速やかに撤回すると同時に被許諾者に通知しなければならない旨を明らかにする。第3に、開放許諾にあたっては、信義誠実の原則に従わなければならないことを明らかにし、特許の開放許諾の申立てをする際には、開放許諾の申立ての要件に適合することについて誓約しなければならない旨規定する。第4に、特許権者は、使用許諾料の算定根拠及び算定方法についての簡単な説明を併せて提出しなければならず、原則として2000字を超えない旨規定する。特許の使用許諾料は、この簡単な説明に依拠しなければならず、固定料金基準で支払うときは、原則として2000万元より高くない旨規定する。2000万元より高いときは、特許権者は、特許法第50条に規定する開放許諾以外のその他の方法で許諾することができる。歩合料で支払うときは、純売上高の歩合は、原則として20%より高くないこととし、利益額の歩合は、原則として40%より高くないこととする。第5に、特許権の譲渡の場合を除き、特許権者にその他の事由により変更が生じ、かつ、開放許諾の実行を継続するときは、もとの開放許諾の申立てを撤回し、改めて申立てをする関係手続を速やかにしなければならない旨明らかにする。特許権者の変更後、開放許諾を実行しないこととするときは、もとの開放許諾の申立てを撤回する手続を速やかにしなければならない。

 

6.国際意匠出願の部の新設に伴う改正内容及び改正の説明(第6部を新設)

 

  国際意匠出願についての第6部を新設して、その下に2章を設け、第1章を国際意匠登録出願についての事務処理とし、第2章を国際意匠出願についての審査とする。

 

 第1章では、国際意匠登録出願の提出ルートを明らかにする。受領日、特許庁が送付することのできる送付の要件及び送付又は不送付の手続、送付の結果の告知などの点について規定する。国際意匠出願に付与する出願日及び国内出願番号、その他の書類の受理の要件、受理の手続、分割出願の受理、公告の手続及び書誌的事項の変更、権利の回復について規定する。手数料については特別に規定する。

 

 第2章では、国際意匠出願の国内手続における審査の範囲、審査の原則、審査の手続、国際公表がされた書類の効力並びに審査の内容及び基準について規定する。また、分割出願を提出する時期、特許代理を依頼する必要、優先権書類の謄本の提出及び関連する審査、新規性喪失の例外適用期間についての証明資料の提出及び審査上の要求などの点についてさらに規定する。国際意匠出願について既に優先権主張がされていて、国際事務局に受け入れられているときは、優先権主張料は徴収しない。

 

 なお、特許審査指南改正草案(再意見募集案)の詳細(中国語)は、

http://www.cnipa.gov.cn/art/2022/10/31/art_75_180016.html

にて入手することができます。

本欄の担当
伊東国際特許事務所
所長・弁理士 伊東 忠重
副所長・弁理士 吉田 千秋
担当:中国弁理士 張 小珣
翻訳:中国チーム 畠山 敏光
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