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インド、ブラジル、カナダの特許制度の最新情報
インド、ブラジル、カナダの法制度に動きがございましたので、その主な内容についてご案内申し上げます。
1.インド:特許法規則改正案 公表
2023年8月23日、インド政府は特許法規則改正案を公表致しました。9月下旬に意見公募期間を終えたところです。改正案の主な内容は以下の通りです。
項目 |
現制度 |
改正案 |
外国出願情報開示義務 (Section8(1)(2)) |
◆Section8(1) ・インド出願から6月以内 ・対応外国出願から6月以内 ◆Section8(2) ・審査官の求めから6月以内 |
◆Section8(1) ・インド出願から6月以内 ・最初のインドOA発送日から2月以内 ◆Section8(2) ・審査官の求めから2月以内 |
分割出願 |
親出願のクレーム記載事項から分割出願 |
仮出願の明細書記載事項からの分割出願も可 |
審査請求期限 |
優先日から48月以内 |
優先日から31月以内 |
年金納付(減額) |
なし |
登録後、4年分以上を期限の1年前に一括納付すると庁費用が10%減額される(※1) |
実施報告義務 (Statement of Working) |
特許付与された次の会計年度から毎年度提出 |
提出頻度が3会計年度に1回へ |
延長申請 (Rule 138) |
以下の手続きは除外(主要な手続きのみ掲載) ・国内移行(優先日から31月) ・審査請求(優先日から48月) ・年金納付(6月の追納期間はあり) |
これまで除外されていた国内移行/審査請求/年金納付(追納期間経過後)等も対象となる(※2)。最長6月まで延長可能 |
※1:年金納付(減額)の例
・登録時:第3年度~第6年度の累積年金納付(登録時の累積年金には適用されない)
・登録後:第7年度~第11年度の5年分を2023年(第7年度の納付期限が2024年の場合)に一括納付…庁費用10%の減額あり
※2:延長申請の方法(例)
・審査請求期限=2023年10月5日
・2023年12月1日に審査請求
改正規則下においては、2月延長とみなされ、所定の庁費用を納付(INR 50,000/延長1月)
・INR 50,000=約90,000円
今後の動向は現地代理人より情報を取得次第、ご報告させて頂きます。
2.ブラジル:Public Consultationの開始
2023年9月14日、ブラジル特許商標庁(BPTO)は、Public Consultation(公開協議)の実施を発表致しました。
目的は、ブラジル特許法32条、33条既定の自発補正期限(審査請求まで)、審査請求期限(出願日から36月)が適切であるか、これらの期間の短縮等がプラスになるのか、広く意見を聴くことにあります。
Public Consultationでは、2023年10月29日までQ&A形式でコメントや提案を提出することができます。
なお、BPTOの2023年~2026年の計画によりますと、2026年までにブラジル出願後24月以内に特許が付与されると予想されております。
ブラジルには、PPH以外の審査迅速化のオプションが多数ございます。例えば、すでに製品・サービスがブラジル市場で入手可能であれば、その証拠資料を提出することで審査促進の申請が可能です(”Technology made available in the market” オプション)。
審査迅速化オプションにつき、ご興味がある場合はどうぞお問合せください。
3.カナダ:Small Entityの条件変更と庁費用改定(2024年1月1日~)
2024年1月1日より庁費用が改定(値上げ)となります。
また、併せてSmall Entity(小規模団体)の条件も変更となります。
※カナダではSmall Entityに該当する企業等に対して庁費用が減額される制度がございます。
(1)Small Entityの条件変更
現状、出願時に
・従業員50人以下の事業体または
・大学であって、
・従業員50人を超える事業体に直接的・間接的に支配/管理/ライセンスの義務がない
ことが求められますが、
「従業員50人以下の事業体」が「従業員100人未満の事業体」へ改められます。
なお、Small Entityの申請には、宣誓書の提出が必要です。
(2)庁費用改定(表は特許Standard Entity)
項目 |
現行(CAD) |
2024年1月1日~(CAD) |
出願 |
421.02 |
555.00 |
審査請求 |
816.00 |
1,110.00 |
登録料 |
306.00 |
416.00 |
クレーム超過(20を超える)※1 |
100.00 |
110.00 |
ページ超過(100を超える)※2 |
6.12 |
8.00 |
年金(第3~5年度)※3 |
100.00 |
125.00 |
年金(第6~10年度) |
210.51 |
277.00 |
年金(第11~15年度) |
263.14 |
347.00 |
年金(第16~20年度) |
473.65 |
624.00 |
※1:審査請求時及び登録料納付時。登録料納付時は、審査時の最大クレーム数が20を超える場合に納付する。ただし、審査請求時に支払い済の超過クレームはカウントしない。
※2:登録料納付時。配列表は除く
※3:the second, third, and fourth anniversaries とされており、カナダのカウント方法ですと第2~4年度となります。上表は、弊所でご案内を差し上げる際の年次に変換させて頂いております(第6年度以降も同様です)。
特許・意匠・商標の値上げ詳細につきましては、
・特許
https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/patents/patent-fees
・意匠
・商標
https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/trademarks/fees-trademarks
をご参照ください。
- 本欄の担当
- 伊東国際特許事務所
所長 弁理士 伊東 忠重
副所長 弁理士 吉田 千秋
担当:弁理士 野崎 圭子