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特許権の消尽に関し最高裁が判断 2008年6月9日 米国連邦最高裁判決
2008年6月9日、特許権の消尽をめぐって争われていた事件Quanta v. LG Electronicsで、米国連邦最高裁判所が判決を下した。
背 景
(1) LG Electronics(以下「LGE」)は、コンピュータ技術の特許をインテルにライセンスした。ライセンス契約では、ライセンス特許を使用したマイクロプロセッサ及びチップセット(以下「インテル製品」)をインテルが製造/販売することを許可すると共に、インテル製品をインテル部品以外と組み合わせる権利を第三者にライセンスしない旨が明示された。また別途締結されたマスター契約において、インテルがインテル製品を第三者に販売する際、インテル製品と非インテル部品とを組み合わせた製品にはライセンスが及ばない旨をインテルが購買者に通知することが合意された。
(2) Quanta Computer,Inc.等(以下「Quanta」)は、インテルからインテル製品を購入した際に上記通知を受けていたが、インテル製品をインテル部品以外の部品と組み合わせたパソコンを製造販売した。
(3) このことでLGEがQuantaを訴えた事件で、地裁は、特許消尽が方法特許には適用されないと判示するとともに、ライセンス契約したインテルが販売することによりインテル製品についてのLGEの特許権は消尽したと判断した。CAFCは、特許消尽が方法特許には適用されないことについては地裁と同様に判断したが、ライセンス契約によって販売が許可されていないことを理由として、特許消尽は適用されないと判断した。Quantaは、これを不服として最高裁に上告した。
最高裁判決
最高裁は、(1)方法特許が消尽しないとすると特許消尽の原理そのものが無意味になってしまうのであり、方法カテゴリの特許であっても消尽論が適用されること、(2)特許発明の全てを具現化したものではなくとも特許発明の本質的な特徴を具現化した物を販売すれば(即ちメモリやバスを含んでいなくともマイクロプロセッサ及びチップセットを販売すれば)、その特許権は消尽すること、(3)当該ライセンス契約では、インテル製品を非インテル部品と組み合わせようとしている第三者にインテル製品を販売することを禁止してなく、マスター契約に規定される通知に第三者が従わない場合であってもインテルの販売する権利が制限されていないこと、を判断として示した。これらの判断に基づいて、インテルによるQuantaへの合法な販売により特許権は消尽し、Quantaに対して特許権を主張することはできないものと判示した。