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リーヒ・スミス米国発明法の補充審査条項および再審査料金の改定に関する最終施行規則(2012年8月14日公表)

リンク先:http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2012-08-14/html/2012-17917.htm

 米国特許商標庁は、リーヒ・スミス米国発明法の補充審査条項を実施するために、特許訴訟における施行規則を改定しています。この補充審査条項により、特許権者は、特許に関連すると考えられる情報を検討、再検討、または訂正するための、当該特許の補充審査を米国特許商標庁に対して請求できるようになります。これらの条項により、特許の権利行使可能性を訴訟において担保することが、特許権者にとって容易になると考えられます。また、米国特許商標庁は、査定系再審査の請求を行う際の料金を調整すると共に、査定系再審査手続および当事者系再審査手続の申し立てを行う際の料金を、これらの手続のコストをより正確に反映するように設定しています。

 施行期日:この最終規則の改正は、2012年9月16日に施行されます。
 適用対象:この最終施行規則の変更は、2012年9月16日、それ以前、またはそれ以後に発行された、全ての特許に対して適用されます。

概要

 補充審査は、その請求により提出された情報が、特許性に関する実質的に新たな問題を提起するか否かを判定するものです。請求により提出された情報によって、特許性に関する実質的に新たな問題が提起される場合、米国特許商標庁は、当該特許に対する査定系再審査を開始します。

 特許の補充審査において情報が検討されたか、再検討されたか、或いは訂正された場合には、当該情報が当該特許の先の審査において考慮されなかったか、不適切に検討されたか、或いは誤っていたとしても、当該情報に関連する行為に基づいて当該特許が権利行使不能とはならない旨が、幾つかの例外はありますが、最終施行規則に規定されています。

 補充審査の請求には、以下の(1)~(4)の項目を含めなければなりません。

(1)検討、再検討、または訂正が請求された情報のリスト
(2)当該特許における補充審査請求の対象となる各請求項の特定
(3)当該特許の特定された各請求項に対する各情報の妥当性および適用の仕方に関する個別の説明
(4)当該請求以外の提出文書で、長さが50ページを超える場合には、その提出文書の関連部分の要約

最終規則によれば、補充審査を受けるためには、以下の費用が必要となります。

(1)補充審査請求を処理するための料金$5,140.00
(2)補充審査手続の結果として開始される査定系再審査の料金$16,120.00
(3)補充審査手続において、長さが20ページを超える非特許文献を処理するための費用、21ページから50ページの間の文献に対して$170.00、追加の各50ページ又はその端数について$280.00

また、最終規則によれば、再審査を受けるためには、以下の料金が必要となります。

(1)査定系再審査の請求の料金$17,750.00
(2)37 CFR 1.550(i)及び1.937(d)に具体的に列挙されるもの以外の査定系再審査手続または当事者系再審査手続の申請の料金$1,930.00
(3)37 CFR 1.510に基づき、拒絶された査定系再審査の請求の費用$4,320.00(この金額は、査定系再審査の請求費用に含まれていて、その査定系再審査の請求が拒絶された場合には払い戻せない部分となっています)。

 特許の補充審査の請求については、セクション1.601(a)が追加され、当該特許のすべての権利、権原および利益を有する者が申請しなければならないことを義務付けています。補充審査の請求は、当該特許の査定系再審査に帰着する場合があります。

 セクション1.605(a)によれば、各補充審査請求には、当該特許に関連すると考えられる情報を最大で12項目まで含めることができます。つまり、各補充審査請求により提出できる情報の項目数は、12に限定されています。

 「情報項目」は、当該請求の一部分として提出された関係書類を含むことがセクション1.605(b)に規定されています。ここで、当該関係書類は、特許権者が米国特許商標庁に対して検討、再検討、または訂正を請求した、当該特許に関連すると考えられる情報を含むものです。そのような情報項目とみなすことのできるものの例として、雑誌論文、特許、宣誓供述書または宣言、若しくは、オーディオまたはビデオ記録の複写物が考えられます。

 セクション1.610(b)(2)は、当該請求に、検討、再検討、または訂正することが請求されている情報項目のリストを含めることを義務付けています。必要に応じて、このリストはセクション1.98(b)の要件を満たさなければなりません。例えば、該当する場合には、このリストに各情報項目の公開日を含めなければなりません。このリストには、当該請求の根拠である情報項目全てを含めなければなりません。

 セクション1.610(b)(4)は、当該請求において、補充審査請求の対象となる各特許請求項を特定することを義務付けています。補充審査の結果は、情報項目のいずれかによって、特許性に関する実質的に新たな問題が提起されるか否かを判定したものとなります。特許性は当該特許の請求項に関連するものであるので、特許性に関する実質的に新たな問題が情報項目のいずれかによって提起されるか否かを米国特許商標庁が判断するためには、特許権者が審査対象の特許請求項を特定する必要があります。

 セクション1.610(b)(5)は、補充審査が請求された当該特許の各請求項に対する各情報の妥当性および適用の仕方に関する個別の詳細な説明を、当該請求に含めることを義務付けています。

 セクション1.610(c)(3)は、情報項目に対してどのように請求項が差別化され特許性があるのかについての説明を、当該請求に含めることができる旨を規定しています。セクション1.610(c)(4)は、各情報項目が特許性に関する実質的に新たな問題を提起すること、或いは、提起しないことに対する理由の説明を、当該請求に含めることができる旨を規定しています。

 セクション1.620(a)は、補充審査の請求の提出日から3ヶ月以内に、当該特許のいずれかの請求項に関連する特許性に関する実質的に新たな問題が、当該請求において適切に提出された情報項目のいずれかによって提起されるか否かについて、米国特許商標庁が判定することを義務付けています。当該請求により提出された情報項目が、特許性に関する実質的に新たな問題を提起するか否かの判定基準は、MPEPにおいて規定される基準になります。すなわち、通常の審査官が特許性を判定する上で当該情報項目が重要であると考える実質的な可能性があるか否かということになります。

 セクション1.620(e)は、補充審査手続におけるインタビューを禁じています。この要件により、米国特許商標庁が補充審査の請求を3ヶ月の法定期間内に処理することができます。

 セクション1.620(f)は、補充審査手続において、補正書を提出してはならないことを規定しています。補正書は情報項目ではなく、補充審査手続においては適切ではありません。

以上

本欄の担当
副所長・弁理士 吉田 千秋
米国オフィスIPUSA PLLC パテントエージェント 有馬 佑輔
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